『ぐりとぐら』の作者が語る よい絵本 三つの条件

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名作絵本『ぐりとぐら』の作者、中川李枝子さん

 1963年に誕生し、誰もが子どものころに楽しんだ絵本『ぐりとぐら』シリーズ。大きくておいしそうなカステラに憧れ、2匹ののねずみと森の仲間の世界に心を躍らせた、そんな思い出がある方はたくさんいることでしょう。よい絵本との出会いは、いくつになっても忘れない一生の財産として私たちの心に残っています。

『ぐりとぐら』の作者中川李枝子さん(79)は、子育て中のお母さんへのメッセージをしたためた『子どもはみんな問題児。』(新潮社)のなかで、子どもに与える絵本はどのような本がよいのかについて語っています。ロシアの文豪トルストイの挙げた優れた芸術三つの条件は優れた子どもの本にも当てはまるといいます。

 一番目は「新鮮さ」。読むたびに新たな感動を覚えること。
 二番目は「誠実さ」。作家がただ小説を書きたくて書くのではだめで、そこに精神的にすぐれたもの、誠実さがあるからこそ人の心をうちます。
 三番目が「明快さ」。相手にわかること。特に子どものものは明快であることが第一条件です。
 良い本と出会うのは幸せなことです。
 生まれてどんな本に出会うかで、人間の運、不運というものはかなり左右されるのではないかと思います。

 そして具体的な書名を挙げ「赤ちゃんには赤ちゃん絵本、と決めつけないで」と読者に語りかけます。

 二歳の子どもだっておはなしが好きです。自分では上手にできませんが、聞いて想像する分には二歳でも充分に楽しむ力を持っています。ストーリーがあって、絵やおはなしが子どもに語りかけてきて、ページをめくるたびに次へ次へと展開してゆく。
 昔の赤ちゃん絵本はやたら動物がでてきて、「うさぎさんかわいいね」といって次のページをめくると、ねこさんがでてきて「かわいいね」、その次はいぬさんで「かわいいね」……というパターンでした。それだけではつまらない。

 ねこだったら石井桃子さんの『ちいさなねこ』は、一匹のねこがいろいろな目にあっていくおはなしでハラハラしたりドキドキしたり、くり返し楽しめる内容があります。
 読むたびに何か発見があって、子どもをひきつける傑作絵本です。

 では子どもが本を読んでいる途中で飽きてしまったら? それは子どものせいではなく、本のほうに欠陥があるとのこと。「子どもにおもしろい本は、大人にもおもしろい」と絵本選びの大事なルールを明かしています。

デイリー新潮編集部

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