椎名誠さんが告白した「35年間の不眠症歴」

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 作家の椎名誠さんといえば、冒険やキャンプや焚火をしている元気なおじさん、というイメージをお持ちの方も多いことだろう。ある時はアマゾン、ある時は北極海へと冒険旅行をしている姿はテレビでもお馴染みだ。

 ところが、新著『ぼくは眠れない』で椎名さんは意外な告白をしている。若い頃から不眠症を抱えており、その「不眠症歴」がなんと35年にもなるというのだ。奇しくも『さらば国分寺書店のオババ』での作家デビューから今年で35年なのだが、実はこの作家歴と同じだけの「不眠症歴」ということになる。

 子供の頃から青年期までの椎名さんは、不眠とはまったく無縁だった。とくに格闘技に熱中していた時期には、ボクシングのスパーリング後に夕食を食べると、もう眠くなるほどだったという。

 社会人になってからもよく働き、よく酒を呑み、よく眠る日々だった。

 ところが忙しく働く中で、34歳の時に扁桃腺炎で熱が出たため病院に行ったことから状況が変わってしまう。扁桃腺炎で熱が出ることはそれまでにもよくあったのだが、その病院で医師から、こんなに扁桃腺炎を繰り返していると腎臓を悪くしますよ、と忠告を受けた。

 この言葉が気になって、『家庭医学全書』を開いたのがまずかった。気になる「腎臓病」のあたりを開くと、体のあちこちが気になり始めるのだ。

「あのテの『家庭医学全書』というのは悪魔の書のようなところがあり、どんどん読んでいくとどんどん病気が増えていくようである。なおも読んでいくと、腎臓病を悪化させるとネフローゼなどという複合化された重い病いの可能性もあるという。ぼくは天井をみあげ、自分がどんどん重病状態になっていくのを感じた」(同書より)

 もちろん実際には腎臓には問題はないのだが、この不安な心理状態になったことをきっかけに、椎名さんは不眠症への道を歩むことになってしまう。

 さらに事態を悪化させたのが、「ストーカー事件」の勃発だ。精神に不調を抱えた女性につきまとわれ、深夜に自宅にまで押しかけられるという事件が起きたのだ。それ以来、不眠症はより深刻化してしまった。

 その先は、不眠症を経験された方ならお馴染みの道かもしれない。睡眠薬を服用し、酒に頼り、また睡眠グッズをあれこれ試し……。

 普通の人と異なるのは、これらの経験をまとめて一冊の本にしてしまった、という点だろう。同書は、作家と不眠症の長い長いバトルの記録でもある。

 ただし、最終章のタイトルは「やわらかい眠りをやっと見つけた」。タタカイはムダではなかったようなのだ。

椎名誠と語る「不眠」の夕べ
『ぼくは眠れない』刊行記念イベント

日時:2015年3月18日(水)19:00-20:30
会場:ラカグ2F soko(神楽坂)
住所:東京都新宿区矢来町67
*当日会場にて書籍をお買い上げのお客様にはサイン会を実施いたします。
詳細はこちらをご覧ください。

デイリー新潮編集部

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