時代劇研究家が“名指し”で批判した有名俳優はだれか?

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 時代劇・映画史研究家の春日太一氏の新刊『なぜ時代劇は滅びるのか』が話題を呼んでいる。日経新聞の書評欄では、評論家の縄田一男氏が「星5つどころか10でも20でも差し上げたい」と激賞。

 同書が評判を呼んでいる理由の一つが、あらゆる関係者を実名で取り上げ、時に厳しく批判を加えている点だろう。たとえば「第三章 役者がいない!」では、何人かの俳優について「時代劇に向いていない」と手厳しい評価を下している。

 中でも、岸谷五朗への評価は辛辣だ。2006年に放映された岸谷主演の『仕掛人 藤枝梅安』(フジテレビ)について、こんな風に述べている。

「(梅安という作品では)人助けを生業とする者が、一方で人を殺す。その陰影を抱えた男の二面性を名優たちが魅力的に演じてきた。日常の素朴さと殺しの冷徹さの緒形拳、飄々とした日常と怒りに満ちた殺しの小林桂樹、渡辺謙の梅安は日常では爽やかな好青年の顔を見せる一方で殺しになると憂いを帯びる……彼らは皆、完璧なまでに作り込んだ芝居で、非情な世界に生きる男の業を見事に演じきっていた。

 が、2006年版の梅安を演じた岸谷五朗は違った。『自然体で演じたい』と現代的な日常性で演じることを選び、梅安の二面性や非情さを作り込むことを拒否したのだ。その結果はどうだったか。能面のような無表情の男がウロウロしている姿が終始映し出され、どのような感情を抱き、何を考えているか分からない、間抜けな梅安がそこにいただけだった。血湧き肉躍るヒロイックさも、切なくなるドラマチックさも全くなく、観ていて何の感情も動かされなかった。だいたい、何人も人を殺してきているのに『自然体』でいる男に、感情移入などできるはずもない」

 時代劇を愛しすぎた者ゆえの厳しい批評だが、もちろんこれには異論もあることだろう。「私はそんな彼の演技が好きなの!」というファンの方がいるのは当然だ。

 タイミング良く(?)というべきか、この10月には岸谷主演の時代劇ドラマ『ぼんくら』(NHK)もスタートする(16日~)。酷評された「梅安」から8年、春日氏を唸らせるような名演が期待されるところである。

デイリー新潮編集部

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