ケータイとアルコール、どっちが交通事故の元になる?

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 忘年会のシーズンになるにつれて、飲酒運転が増えることが予想される。ちょっと飲んだだけだから、少しさませば大丈夫、などと思うドライバーも多いようだが、アルコールを抜くのには意外と時間がかかる。

 ビール大瓶1本、あるいは日本酒1合のアルコールを体内で処理するには3時間かかるというのだ。

 しかし、事故の要因は他にもある。

 特に身近で、見落とされがちなのが携帯電話だろう。

交通事故学』(新潮新書)の著書がある日本交通心理学会会長の石田敏郎・早稲田大学人間科学学術院教授によると、携帯電話に起因する交通事故の7割は着伝時(電話がかかってきた時)と架電時(電話をかけている時)に発生しているという。着信から通話状態にして視線が元に戻るまでの視線の移動時間は1.9秒。つまり約2秒間脇見をしているのと同じというわけだ。たった2秒とはいえ、この間にも車は走り続けているわけで、重大事故を引き起こすのには十分な時間だと言えるだろう。

 通常、ドライバーは周囲の状況を見ながら(視覚探索)、自車の進路、スピード、車間距離を調整し続ける。だが、電話に気をとられるとその調整力(注意配分と制御能力)が低下するため、無意識にスピードを落とし、車間をあけるなどの行動をとる(リスク補償)。それが周囲の状況とミスマッチを起こすと、事故につながりやすい(図を参照)。

 事故を起こしたドライバーの携帯電話使用記録を調査した結果、使用中の事故は、使用していない場合の4倍の危険性があるという報告もある。これはビール大瓶1本半飲んだぐらいの事故遭遇確率に相当するのだ。

 床に落ちた携帯電話を拾おうとして、道路外に逸脱したというケースや、込み入った話(別れ話や金銭トラブル等)に気をとられてしまって注意が散漫になったケース等々も報告されている。

「飲酒運転は絶対にしない」という人でも、携帯電話はつい運転中に手にとってしまうことがあるのではないだろうか。しかし、実際には飲酒運転と大差ないか、それ以上のリスクがあることは肝に銘じておくべきなのだ。

デイリー新潮編集部

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