今年は3割30本塁打!巨人・坂本勇人はなぜ「メジャー挑戦」を口に出さなくなったのか

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

 首位争いから目が離せないセ・リーグだが、V奪還に向けて巨人には頼りになる柱がある。それは坂本勇人だ。これまでもチームを代表するスター選手であったが、今年ほど、彼がチームに欠かせないシーズンはない。打率3割をキープして、本塁打は2010年以来となる30本の大台を突破した。さらに、選手の入れ替えが激しいチームで、常にショートを守り続けている。

 07年にドラフト一位で指名され、巨人に入団した坂本。16年には首位打者を獲得。強肩を活かした守備力も際立ち、今や「日本一のショート」であることに異論はないだろう。

 振り返ってみると、坂本は「いつかはアメリカでやってみたい気持ちはある」とメジャーへの挑戦を口にしていた。しかし、昨年末、巨人と年俸変動制の複数年契約を結んだことで、その挑戦はかなり遠のいた。坂本は、メジャーでは通用しないと考えて、諦めてしまったのだろうか。かねてから彼をマークしてきたMLBのアジア地区担当スカウトは、こう指摘する。

「投手出身なので肩の強さがあるが、雑な送球も目につきますね。基本に戻って、下半身をしっかり使って送球できるようになれば、もっと良くなると思いますが。また日本の球場の人工芝は、打球の勢いが死なないし、イレギュラーも少ないため、守備位置で待ったままで捕球して、一塁に送球しても十分にアウトにできます。それが、過去の日本人内野手同様に、坂本の守備に対する評価が低い理由のひとつです。三塁にコンバートする手段もありますが、今の坂本の動きは、完全にショート。年齢を考えるとコンバートは厳しいですね」

 日本では定評のある打撃についても評価は厳しい。

「坂本は右投げ右打ちですが、利き腕は左手です。天才的とも言われる内角打ちを可能にするのは、その左手の使い方。器用に『抜く』ことができるから、体をうまく回転させて、バットで『さばく』ができる。しかし、イチローほどのバットコントロールがあれば別ですが、『さばく打ち方』は、メジャーでは通用しないケースも少なくない。最近はしっかり打ち返した打球も見せていますが、それをどこまで貫けるでしょうか。打撃スタイルや考え方を今からチェンジできるか、未知数といえます。そのあたりは坂本自身でもよくわかっているのではないでしょうか」(前出のMLBスカウト)

 一方で、若手時代から食事などをともにする巨人スポンサー筋は、坂本の“ある変化”について、こう話す。

「坂本君は本当に野球が好き。食事をしていても野球の技術を教えてくれる。一時期は結構、メジャーを見ていて、話にも出ていました。でも最近は、『日本が好きだし、やりやすい』とよく言っている。現実的に、これまでの日本人野手がうまく行かなかったのを見ています。また、英語も話せないから、アメリカで野球だけの生活はキツイはず。親しい女性と交流するなど『気分転換をしないと疲れてしまう』とも言っていた。アメリカではそうはいかないから、巨人にいるのがいいんでしょうね」

 周辺状況や報道された契約内容を見ても、メジャー移籍はほぼ消滅したと見てよさそうだ。自らを知っているから、最も高いパフォーマンスを発揮できる場所を選ぶ。坂本にとって最適な場所は巨人なのかもしれない。チームにとっても若手選手への切り替え時期であり、若手が育つまでに時間を稼ぐ必要がある。その中で坂本という存在が、チームに居続けるのは何物にも変えがたい。巨人ファンにとっては、まずは一安心といったところだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2019年8月30日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。