金正男の死で闇に封印される「横田めぐみさん」生存情報

国際 韓国・北朝鮮

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「裸の大将」を彷彿とさせる、どこか憎めない彼が暗殺されたとて、日本には何の影響もなかろう。そう考えている方が多いかもしれないが、それは間違い。何しろ金正男氏は、横田めぐみさんの生存情報を得るためには必要不可欠なキーマンだったというのだから。 

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拉致問題解決は遠のくのか

 めぐみさんは死亡した、とする北朝鮮側の説明が嘘に嘘を重ねたものであったことはご承知の通り。当初、北朝鮮は、めぐみさんは93年3月に病院で自殺した、と説明していた。が、その後、地村富貴恵さんが「94年に入り、横田さんが隣に引っ越してきた」と証言すると、慌てて死亡時期を94年4月に訂正。さらに、めぐみさんのものとされた遺骨を日本の施設でDNA鑑定したところ、偽物であることが判明した。

■「国家安全保衛部」

「めぐみさんの生存情報は、脱北者の証言でも補強されました。朝鮮労働党作戦部幹部の息子と友人だったというある脱北者は、07年1月前後にその友人が“(めぐみさんは)今もまだ生きている”と話していた、と証言しています」(北朝鮮ウォッチャー)

 そして、今回暗殺された正男氏については、

「98年、彼は北朝鮮のIT戦略を事実上統括する『コンピューター委員会』の委員長に就任。それにより、金正日直轄の秘密警察『国家安全保衛部』から諸々の報告を受けるようになり、その中に、めぐみさんを含む拉致被害者の情報も含まれていたのです」

 と、関係者が明かす。

「『国家安全保衛部』から正男氏への報告は、まだ彼と正恩氏の水面下の権力闘争が続いていた06年頃までは密に行われ、めぐみさんに関しては、“今も生きている”という報告内容だった。権力争いの趨勢が決してからも、正男氏は、国家安全保衛部内の正男シンパから細々と情報を得ていたといい、日本政府関係者も折に触れて正男氏周辺に接触していた」

 謎多き金正男氏暗殺事件。それは、拉致問題という重大事案にも大いに影響を及ぼしていたのだ。

特集「『金正男』暗殺は『金正恩の指令』に疑義あり」

週刊新潮 2017年3月2日号掲載

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