児童ポルノ摘発、大学の“準ミスター”も 小児性愛者たちが課していた「3つの掟」

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〈自分はNPO活動をやっているので、そこでなら、いくらでも男の子を触ったりできるよ〉

 摘発された開発(かいほつ)哲也容疑者(35)は、ラインで知り合った仲間にそう伝えてボランティアへの参加を誘っていた。まるで“獲物”を分け合うのが楽しくて仕方がないかのようである。

 2月9日、神奈川県警など7県警の合同捜査本部は、男児のわいせつ画像を撮影したなどの容疑で開発ら6人を逮捕・送検したと発表。押収された画像は10万点以上、被害を受けた児童は少なくとも168人にのぼる。

 そこで分かったのは、子供の周りに何食わぬ顔をして「小児性愛者」が潜り込んでいた事実だ。その「輪」の中には教師(元教師も含む)のグループもいた。倒錯した性欲を持て余した者たちがボランティアや教育者の顔をして食指を動かす――幼い子を持つ親にとってこれほどの衝撃はあるまい。

■自然体験ツアーに参加

楽しそうな自然体験だが――(NPO法人 自然体験活動支援センターHPより)

 事件が発覚したのは意外なところからだった。

 神奈川県警の捜査関係者が言う。

「きっかけは昨年4月、神奈川県内で15歳の少年(高校1年生)が補導されたことでした。その少年が調べの中で“開発という男にわいせつ行為をされた”と明かしたのです」

 調べてみると、開発は子供たちにキャンプなどの自然体験をさせるNPO「自然体験活動支援センター」のツアーを請け負う旅行代理店の社員だった(昨年9月に退職)。看護師の資格を持ち、看護添乗員としてキャンプなどに参加、就寝中の見回りやケガの手当てをするのが仕事である。

 ドルフィンスイム、船釣り教室、さつまいも掘り、カヌー旅など、開発は甲斐甲斐しく子供たちの世話をして回った。

 が、2カ月後、捜査本部は開発の自宅(大阪府東大阪市)に踏み込む。そこで捜査員が見つけたのは大量の動画や画像だった。

「画像には少年の下着を脱がせ、性器をつまんでこすっている様子などが生々しく写っていたのです。直接の容疑となったのは、群馬県の『はこだたみキャンプ場』で寝ていた8歳の男児の服を脱がし、動画を撮ったというものですが、他にも傷薬や虫刺され薬を塗るふりをして触ったり撮影したこともあった。“大義名分”があるのですから、撮影に気がつかない児童も多く、まさにやりたい放題でした」(同)

 開発にとって、NPOの仕事は願ってもない“天職”だったに違いない。

鈴木航平容疑者(Facebookより)

■大学の“準ミスター”も

 捜査関係者が続ける。

「中学2年生の頃から男児に性的興味を持つようになった開発は、5年前にこの旅行代理店にアルバイトとして潜り込むのです。子供に触れたり撮影をするのが目的の入社でした。看護師の資格を取ったのもそうです。正社員になると、自分だけで楽しむことに飽き足らなくなり、2年前からラインで知り合った小児性愛者の仲間を自然体験ツアーのボランティアとして引き入れるようになる。それが、共犯で捕まった3人の若者です」

 その1人・鈴木航平容疑者(22)は、横浜市立大学の4年生、学園祭のミスターコンテストで“準ミスター”になったさわやか系のイケメンで、誰も小児性愛者とは気が付かなかった。

■3つのルール

「開発はゲイや児童ポルノ愛好者の間では知られた存在でした。それでも、昨年4月の補導まで警察が捕捉できなかったのは、情報コントロールが徹底していたからです」

 とは、別の捜査関係者だ。それによると、開発は、3つのルールを自分に課していたという。

「それは『自分が撮影した画像を知らない第三者には絶対に渡さない』、『画像をネットにアップしない』、『画像を交換するときは、直接会って行う』というもので、画像からアシが付かないようにしていたのです。そして、SNSで知り合った若者たちとは、カシラ、タワシ、ノッポなどのニックネームで呼び合い、その頭文字をとって“チームTANK”という名前をつけていた。そうやって信頼関係を築いたうえで、ボランティアとして引き込んだのです」(同)

 だが、小児性愛者は自分の“獲物”を他人に見せたくて仕方がないものなのだという。

 合同捜査本部は、開発らの写真を調べるうちに意外な相手に突き当たる。画像の中に、熱海のビーチで撮ったシーンなど、明らかに自然体験ツアーとは違う画像が混ざっていたのだ。それは、今回摘発されたもう一つのグループ、橋本顕容疑者(45)と田中耕一郎容疑者(66)が撮影したものだった。

 橋本は昨年まで東京都東大和市の市立第一小学校の臨時教員。そして田中は、東京都杉並区の小学校を定年退職した後、教員の研修などを行う非常勤講師を務めていた。

「橋本先生は3~6年生の算数を受け持っていました。ぬいぐるみを使って授業をするなど、熱心で子供ともすぐに打ち解ける人でした。10月ぐらいに急にいなくなったので、どうしたのかと思っていたんです」

 と橋本を知る生徒の評判は悪くない。

 だが、先の神奈川県警の捜査関係者によると、

「押収した写真から、橋本と田中が昨年4月と5月に少年にわいせつ行為をしていたことが分かったのです。この事件はすでに起訴されていますが、2人は静岡県熱海市のスーパーやビーチなどで少年に“温泉に入ろう”とか“卓球しよう”などと声をかけ、田中が所有するリゾートマンションに連れ込んでいた。少年を撮影するために橋本はカメラを仕込んだ腕時計まで購入しており、開発とはUSBメモリでこれらの画像を交換していたのです」

 10万点以上の画像にはまだ被害者が特定できていないものもある。また、逮捕された6人以外にも「するが」というハンドルネームを持つ小学校教師など6人の名前が浮上している。

 摘発されたのは、氷山の一角ならぬネットワークの末端に過ぎないのだ。

特集「『児童ポルノ』地下ネットワークの『3つの掟』」より

週刊新潮 2017年2月23日号掲載

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