「フィリピンパブ嬢の社会学」 名古屋・栄にどっぷり浸った研究者

エンタメ 文芸・マンガ

  • ブックマーク

Advertisement

数が減った印象があるフィリピンパブ(写真はイメージ)

 一昔前に比べて、近頃はめっきり数が減った印象を受けるフィリピンパブ。だが、名古屋市の栄4丁目エリアには、今なお100軒近くが軒を連ねているという。その密集地帯にどっぷりと浸った研究者がいる。

 今月、『フィリピンパブ嬢の社会学』(新潮新書)を上梓した中島弘象(なかしまこうしょう)さん(28)。大学時代からフィリピンに興味を持ち、大学院に進んでからも体を張った研究を重ねたという。

「ボランティア目的で、フィリピンに行ったのがきっかけです。そこで目に入ったのは、貧しい国なのに日本人より明るく過ごしている姿。感銘を受けました」

 日本に戻ると、在日フィリピン人が抱える差別や、2世の問題に取り組むうち、

「フィリピンパブで働く女の子がどうやって日本に来ているのかが知りたくなりました。現在は以前のように興行ビザでは来られないはずなのに、今も大勢、フィリピン嬢がいるわけです」

 来日方法や暮らしぶりを調べるため、フィリピンパブに足を運ぶ。と、出会った女性と恋に落ち……。

「誠実な態度に惹かれてしまいました。日本の女性だと、収入や安定などを結婚に求めますが、彼女は一切それがない。僕を人として好きになってくれたんです」

 まさにミイラ取りがミイラになったわけであるが、おかげで成果も得られた。

「偽装結婚などで入国することのほか、彼女たちはタコ部屋で暮らしているけど、本国の家族は、門番やメイドのいる暮らしをしていることも解りました」

 時にヤクザの元へ乗り込み、チビりそうになりながらも、ついにはその彼女と結婚した中島さん。今夏には2世が生まれる予定で、次なる目標は就職だという。

週刊新潮 2017年2月23日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。