東芝、“危機脱出策”の検討結果を2月14日に発表 近づくXデー

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 まるでまな板の上のマグロ、である。昨年末、7000億円に上る巨額損失の存在を明らかにした巨漢「東芝」。不祥事連続の「墜ちた名門」に回復の力は最早なく、今後のシナリオは「解体」の二文字しかないという。

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近づくXデー

「第二の野澤」――。

 東芝社内で、綱川智社長はそう呼ばれているという。

「社員は悪くありません!」

 1997年の倒産時、テレビカメラの前で涙ながらに叫んだ姿をご記憶の方も多いだろう。山一證券最後の社長・野澤正平氏のことである。

 経済誌の記者が言う。

「野澤さんはただマジメ一辺倒なだけで、社内政治に疎く、社長候補とも目されていなかった。経営危機で瀕死になった山一経営陣に最後にトップを押し付けられただけでした。綱川さんもそれと似ている。東芝の中では傍流部門の出身で、性格は温厚。しかし、社内での権力基盤は弱く、情報もほとんど把握できていません。問題となった損失も発表の数週間前に知らされたくらいです」

 ちょうど20年の時を経て、当時の山一と、今の東芝に共通する同じ“匂い”。当時の山一が債務隠し、現在の東芝が不正会計に手を染めていたことも合わせれば、他ならぬ東芝社員自身が、「Xデー」を敏感に感じ取っているのも無理はない。

 昨年12月27日に東芝が発表した、原子力事業での特別損失問題。年が明け、その額は7000億円にも上る見通しであることが報じられている。

■絶体絶命

 これが東芝に何をもたらすのか。

「ポイントは、この3月末の決算で、東芝が債務超過になる恐れが生まれたということです」

 と言うのは、全国紙の経済部デスク。

 債務超過とは、家計で言えば、保有する資産の額を、負債額が上回ることを言う。つまり、貯金に加え、家から車からすべてを売却しても、なお債務が残る経済状況ということだ。東証上場企業の場合、債務超過になり、1年以上それが解消されないと上場廃止となる。何より、銀行との取引が難しくなるし、納入業者から現金での決済を求められる場面も出てくるであろう。

 デスクが続ける。

「東芝の現在の自己資本は約3600億円。これに今期の利益の見通しである、1450億円を足したとしても、約5000億円にしかなりません。そこに7000億円の損失が乗っかるワケですから、東芝は残り2000億円以上を3月までに調達する必要があるのです。普通の会社なら、それを逃れるために、増資などの手段に出る。しかし、東芝は2015年の不正会計の罰として、東証から『特設注意市場銘柄』に指定されているため、市場からの資金調達は、事実上できませんから……」

 絶体絶命というワケだ。

 不正会計問題で東芝は、1600億円にも上る利益かさ上げが発覚し、歴代3社長が辞任。証券取引等監視委員会が調査を開始し、東芝も3名に対して民事で損害賠償請求訴訟を起こした。

「その後、子会社であるアメリカの原発メーカー『ウェスチングハウス(WH)』が巨額の赤字に苛まれていることが報じられました。これを東芝は隠していたのですが、やむなく認め、昨年2500億円もの減損処理をすることになった。これで昨期の東芝は7000億円の赤字に陥りました。この際も、債務超過の危機でしたが、有望分野の医療機器部門や白物家電部門を他社に売ることで約7500億円資本を増強したのです」(同)

 こうして危機を回避した東芝は、半導体事業が絶好調。12月までは、今期の黒字決算が見えていた。

 ところが、あろうことか、年末に再びWH社に関わる巨額損失が発覚し、2年続けての債務超過の危機に陥ることになったのだ。

「今回の危機を脱するため、東芝は“虎の子”の半導体部門を売りに出すことを決めています」

 先のデスクが続ける。

「具体的には、株式の2割を売り、分社化する。これで2000億円から2500億円が手に入る見通し。加えて他の子会社の株を売ったり、東芝病院の売却なども検討しています」

 しかし、これらの「検討結果」を公表するのが2月14日。それからデッドラインの3月末まではひと月半しかないのである……。

特集「サザエさんをお茶の間に届けて半世紀 経産省にも責任がある『東芝』大解体ショー」より

週刊新潮 2017年2月9日号掲載

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