体育会系学生は意外と使えない? 就活生が知っておくべき「キレイゴトぬきの就活論」(3)

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体育会系出身者を冷ややかに見る採用担当者も実は多い

 ■体育会系出身者は有利?

 就活市場では「体育会系出身者は有利で強い」という定説があるという。実際に、体育会系を優先して採用する企業も存在する。

 なぜ有利なのかといえば、「一つのことに打ち込んできた」「練習熱心」「体力がある」「上下関係など理不尽を経験している」「声が大きく面接に強い」などが理由として挙げられる。

 ところが、そんな体育会系出身者を冷ややかに見る採用担当者も実は多い、と指摘するのは大学ジャーナリストの石渡嶺司氏である。

 石渡氏は、新著『キレイゴトぬきの就活論』で「体育会系が『使えない』理由」という項を設けてそのあたりの事情を解説している。以下、同書から要約、引用してみよう。

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■未練は禁物

 体育会系の学生は、もともとがスポーツ選手という「専門的な職業」志望である。特に体育系大学・学部に多い。そういう学生は、スポーツ選手がダメだった場合は、かつて抱いた「夢」の影響から、関連の職種を探そうとしやすい。

 まず、体育教員、その次にスポーツ業界(ミズノ、アディダスなどのスポーツ用品メーカー、プロ野球・サッカーなどのプロチーム運営会社など)、それ以外の民間企業は、志望順位としては一番最後となる。企業の側はそれを見透かしているから、手厳しい意見を言う人も多いのだ。

「なんか、スポーツ選手になれなかったから、仕方なく就職でもするか、としか思えない。そういう未練がましい体育会系学生は真っ先に切ります」

「インターンや説明会、あるいは選考でも『部活の練習があるから』と言って、参加したがらない。レギュラークラスで将来もスポーツ選手として活躍できそうならそれもわかる。が、そうでないなら、民間企業志望しかないわけで、そのために何を最優先すべきかわかっていない」

 就職できても、体育会系の未練を引っ張っている社員は、評価されない。

 ある企業では、体育会系出身の新入社員を採用担当部署に配属した。仮に、一心一郎氏、とでもしておこう。一心氏は中堅大の体育会系出身、パフォーマンスの高さを期待しての人事だった。しかし、結局、一心氏は1年で別の部署へと異動となった。

 インターンシップで学生との交流会を担当させれば、部活の自慢話(俺は××部でレギュラーだった)か、精神論(頑張れば大丈夫)しか話さない。いや、話せないと言うべきか。文系学生はもちろんのこと、体育会系学生でもドン引きである。

 大学回りを担当させれば、部活と縁があった大学と関係者しか回らない。大規模校だと部活指導者がすべて、ということはない。就職課・キャリアセンター職員や就職担当の大学教員にも人間関係を作っておかないと学内セミナー開催などで、支障が出る。

 この一心氏は、大規模校出身なのだが、母校では部活指導者とスポーツ担当の部署には挨拶しても、キャリアセンターには挨拶にいかなかった。それが尾を引いて、母校であるにもかかわらず、学内セミナー開催がなくなってしまった。

 やる気をなくした一心氏は、企業説明会や就活イベントを担当しても、雑用しか任されないようになり、1年で別の部署へと異動することになった。

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■松岡修造パパの選択

 石渡氏は、体育会系の学生の持つ長所を活かすためには、早い段階での「夢」との決別、意識変換が必要だ、と指摘する。

「好例は、松岡修造さんの父親である松岡功・東宝名誉会長でしょう。松岡氏もテニスの日本代表になるほどの腕前で、大学卒業後、社会人プレイヤーの道もあったようです。しかし、それでは選手としての寿命が尽きたときには、同期からも置いて行かれる、と考えて、テニスという『夢』を捨てて、祖父が作った阪急グループの関係会社である東宝に入社しました。そして、同族企業に入社したからといって地位に安住することなく、さまざまな改革を断行して、東宝をさらに大きくした功労者となるのです」

 もちろん、一生を賭けて「夢」を追うのも自由であるし、それも尊い姿なのは間違いない。しかし、諦めたからには、すっぱりと意識を変換することが会社のためでもあり、本人のためでもある、と言うのだ。

デイリー新潮編集部

2017年1月25日掲載

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