【拉致問題】横田早紀江さんの苦悩が増す、夫・滋さんの体調問題

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 いつの間にか年の瀬が迫り、世間は年越しの準備に慌ただしさを増している。日々の雑事に追われて忘れがちになるが、年が明けるということはすなわち、我ら衆生がまたひとつ歳を取り、老けることを意味する――。新年は横田めぐみさんが拉致されてから40年の節目の年となる。しかし、拉致問題解決の糸口は、全くもって見えてこない。

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深刻な「高齢化問題」

「日本中のお父さんお母さんの中で、『(子どもが拉致されたのに)もういいです。諦(あきら)めます』と言う方がひとりでもいらっしゃるでしょうか」

 12月3日、神奈川県横浜市の新都市プラザで、めぐみさんの母である早紀江さん(80)はこう訴えた。拉致問題解決を求めて、めぐみさんらの写真展が開催され、その場で切なる思いを吐露したのである。大変残念ながら、現状ではこの光景は「四十年一日」のものとなってしまっているが、これまでとは若干違うところもあった。夫の滋さん(84)の姿がなかったのだ。

「当日、イベントにあわせて懇談が行われたんですが……」

 と、神奈川県政関係者が声を潜める。

「黒岩祐治知事や横浜市の副市長がいた十数名の場でした。滋さんがいらっしゃらなかったので、参加者から彼の近況について質問が出たんです。すると早紀江さんは、『歳も歳なので、体調が良くないんですよね。特に自分の考えをまとめて話すのが難しくなっていて。しょうがないんですけどね』と仰(おっしゃ)っていました」

 早紀江さんの話は10分程度続いたといい、

「滋さんがなかなか拉致問題関連のイベントなどに出ることができず、そのため政府からは『代理』として息子さんたち(めぐみさんの双子の弟)にイベントに出てほしいと要請があるのだとか。でも、彼らにも仕事や生活があり、どうしたらいいのかと、早紀江さんはお困りでしたね。話を聞いていた人たちは何も言うことができず、重苦しい雰囲気に包まれました」(同)

 横田夫妻と親交のある、別の関係者が後を受ける。

「滋さんの体力はここ1、2年低下が著(いちじる)しく、階段の昇降をひとりでするのが困難になっていて、早紀江さんが仰る通り、話が途中で止まってしまうこともままあります」

 早紀江さんが改めて語る。

「確かに、主人が以前のように話を滑らかにできないということは申し上げました。でも、主人だけではないんです。私も段々と弱ってきていますし、ふたりとも本当に疲れ果てています。(拉致被害者の)有本恵子さんのお母さまもあまり具合が良くないですし……。政府が何をやっているのか分かりません。何も見えないし、何も知らされません。『政府は何をしているんだろう』という声が、どこに行っても聞かれるようになりました」

 拉致被害者、そしてその家族にとって、齢(よわい)をひとつ重ねることの意味は果てしなく重い。

 来年、横田めぐみさんは53歳を迎える。

ワイド特集「師走の忘れ物」より

週刊新潮 2016年12月15日号掲載

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