ドイツ、難民大量受け入れも「就職率13%」の事情

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メルケル首相

 人口8000万人の国に2015年だけで110万人、16年も引き続き30万人の難民が流入したと言われるドイツ。この壮大な“社会実験”の成否を世界が注視しているが、ドイツ連邦移民・難民庁などの調査結果が11月15日、発表され波紋を呼んでいる。15年から16年1月までに入国した難民のうち、13%しか就職できていないというのだ。

「審査官の数が少なく、多くがまだ難民申請の審査を受けている段階であることも原因の一つでしょう。が、ドイツが“資格社会”であることも大きい。昨年、独労働相は“シリア難民のうち、直ちにドイツで働ける資格を持つ者は10%に満たない”と発言していますが、その懸念が的外れではなかったということ。また、今回の発表によるとドイツ語が話せない人が90%前後に達します。これでは資格のない人の場合、単純労働に従事するのも厳しいはず」

 とは、ドイツ在住のジャーナリスト熊谷徹氏だ。

 成人の難民のうち、ドイツ到着前に学校や職業訓練校、大学で10年以上過ごした人の割合は58%、これはドイツ人の88%と較べると格段に低い。大学や職業訓練校に通ったことがある人は3分の1以下だ。

「ドイツ企業が必要としているIT技術者やエンジニアといった人材とは、雇用のミスマッチが起きているのが実情でしょう」(同)

 ドイツ在住の作家、川口マーン惠美氏も言う。

「言った者勝ちという面もあるようで、知人の会社が“自分は技術者だ”“経験もある”と言っていた難民を雇ったのですが、いざ仕事をさせてみたら、何の知識もなくて困ったとこぼしていました」

 逆に、ドイツ人の雇用主がインターン制度を悪用、正式採用をせぬまま難民を次々とただ働きさせる事例なども生じているという。

「ユーゴ内戦後に流入した移民の調査で、就職率は5年で50%前後、10年目以降で60%超、15年目を過ぎて70%以上になるという数字もあります。我慢強い取り組みが必要なのです」(同)

 ドイツ人の忍耐力と排外意識の葛藤が続くのだ。

週刊新潮 2016年12月1日号掲載

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