日本版「ブラックフライデー」に小売業界が注目 定着なるか

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 色彩には、それぞれ意味がある。例えば純真の白、情熱の赤、そして誠実の青。では、黒はどうか。死や悪を連想させ、良いイメージがあるとは言い難い。企業は敬遠しがちな色だが、スーパー最大手の「イオン」が“ブラック”を冠にしたセールを始めるという。

 物価が上昇しない一方で、サラリーマンの給料は期待したほど増えず、来日する中国人観光客の“爆買い”も昨年までの勢いは失せている。経済誌の小売業界担当記者の解説では、

「スーパー業界の今年1月から9月までの総売上高は約9兆6071億円。前年同期比0・4%減で、2年ぶりのマイナスでした。また、百貨店の9月総売上高は、前年同月比5%減で約4233億円まで落ち込んでいます」

 今後も、売り上げが劇的に好転する材料は見当たらず、“冬の時代”に逆戻りしそうな小売業界。三越伊勢丹HDが、来年3月に三越千葉店などの閉店を発表したのはご存じの通り。

財布の紐を緩ませるには(イオンリテール公式HPより)

 目下、生き残りをかける小売業界で注目されているのが、米国由来の「ブラックフライデー」と銘打った「イオンリテール」のセールだ。イオンリテールはイオンの100%子会社で、本州と四国のショッピングモールを運営している。なにやら、29年前の株価大暴落“ブラックマンデー”を想起させるが。

「米国では、11月の第4木曜日に行われる感謝祭の次の日を“ブラックフライデー”と呼びます」

 こう説明するのは、イオンリテールの広報担当者だ。

「ブラックフライデーはクリスマスまで行われる年末商戦の初日で、小売業にとっては1年で一番の“書き入れ時”が始まる重要な日。赤字だった店もこの日から経営が好転することで、“ブラック”と呼ぶ説があります」

 ちなみに、黒字は英語でブラックという。

「昨年から、米国最大の衣料品小売『ギャップ』の日本店が“ブラックフライデー”セールを開催し、お客を沢山集めていた。それを見て、我々も挑戦してみようと考えたのです」(同)

■シンボルになる食品

 イオンリテールの日本版“ブラックフライデー”は、2万強の店舗で今日から3日間開催。期間中は店頭に目玉商品が並び、イベントも行われるという。大手百貨店幹部はこの“挑戦”に対して、

「年末商戦に弾みをつける意味でも非常に良い試みだと思います。製造業では“ニッパチ”というように2月と8月に売り上げが落ち込む傾向がありますが、小売業のそれは6月と9月。クリスマスや正月を控えて、9月から11月はどうしても消費者の財布の紐も固くなりがちですからね。来年は、うちも参戦するかもしれません」

 10月末のハロウィンも“子供の仮装行列”と揶揄されていたが、年を重ねるごとに市場規模が拡大。今年は約1345億円で、バレンタインデーの売り上げを抜いたとの統計もある。果たして、“ブラックフライデー”はハロウィンのように大化けできるのか。小売業界や外食産業に詳しい、経済ジャーナリストの福田健氏が占うには、

「ハロウィンや、市場規模が拡大しているキリストの復活祭“イースター”には、カボチャや卵といったシンボル的な食品があります。メーカーはその食品に関連付けて商品を売り、消費者の反応も悪くない。ブラックフライデーも、シンボルになる食品を消費者に提案できるか否かが、成功のカギになるでしょう」

 黒豚、黒米、黒豆……。年末商戦への繋ぎに定着させるには、“もうひと工夫”が必要。一発屋で終わってしまわないために。

週刊新潮 2016年12月1日号掲載

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