大戸屋お家騒動、“ヤメ検”弁護士対決で見えない収拾

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 創業者の遺骨を抱えた未亡人が、社長室に乗り込み、「恩知らず」「お辞めなさい」「息子を社長にします」と延々と面罵――。

8億円の行方は

 ドラマのワンシーンのような修羅場だが、これは、“創業家vs現経営陣”の対立で揺れる外食チェーン「大戸屋」で昨年9月、実際に起きたことである。

 場面の詳細は先月、本誌(「週刊新潮」)ワイド特集で報じたが、今回はその続きをお伝えする。

「一昨年7月に肺癌が見つかった創業者が昨年7月に死去すると、常務だった息子、三森智仁氏(27)と、創業者の従弟である窪田健一社長との関係がみるみる悪化していきました。そんな両者の確執の根底には、智仁氏の今後の処遇をどうするかということもありますが、それ以上に根深く面倒な問題があるのです」

 と同社幹部氏が明かす。

「それは、創業者への“功労金”。原資は、会社が創業者に掛けていた生命保険の保険金12億5000万円で、当初はそこから8億7700万円を功労金名目で創業家に拠出することが決まっていたのですが、それが宙に浮いたままなのです」

 実は両者、今年4月末に功労金問題も含めて和解が成立していた。5月7日、合意文書が交わされた後の会食の場では、創業者の妻・三枝子夫人と智仁氏を前に、窪田社長が安堵のあまり落涙――と、第三者委員会がまとめた「調査報告書」には記されている。

「ところが、その1週間後、智仁氏が社長に“ある人物に会ってくれ”と依頼した。その人物はライブドア事件などにも登場したフィクサーで、不審に思った社長は面会を拒否。それで合意は御破算になった」(同)

 そして5月19日、智仁氏から東証宛てに声明文が送達されるに至り、同社の“お家騒動”が露見した。

■ヤメ検らしい脅し

顧問弁護士の郷原信郎氏

 その後、同社が設けた第三者委員会が調査を開始。2カ月を経た10月3日、報告書が発表された。

 もっとも、創業家すなわち三枝子夫人と智仁氏は調査への協力を拒んでいる。その理由を、創業家側代理人の則定衛弁護士(78)はこう説明する。

「第三者委員会は大戸屋の顧問弁護士の郷原先生がやっていたもので、中立性、独立性に問題があります。彼自身は委員会を抜け、他の弁護士が調査したという形になっていますけど、私どもの解釈としては報告書は郷原さんの影響下にあるもので、認められないのです。なにより、過去の経緯をあれこれ言っても建設的な話になりませんのでね」

 則定氏といえば、元東京高検検事長で、弁護士に転じてからは村上ファンド事件や陸山会事件などに関わった大物“ヤメ検”弁護士である。その則定氏に厄介者扱いされている郷原信郎弁護士(61)はというと、こちらもヤメ検で、多くの著書がある有名弁護士だ。

 さて、その郷原氏によると、9月上旬、かのフィクサー氏の要請で面会に出向いたところ、突如、則定氏が一緒に姿を現したという。

「知らされておらず、まさかこんなところで大先輩にお会いするとは、とびっくりしました。私がいる以上協力できない旨を告げられ、“あなたにとってリスクになるよ”“キャリアに傷が付くよ”などと言われました。ヤメ検らしい脅しですよね。普通の弁護士だったら、怖気づいて圧力に屈していたかもしれません」

 ところで、肝心の功労金はどうなるのか。

「コンプライアンス上、多額の功労金は株主への利益供与にあたり、法律上は厳しいものと考えます」

 と郷原氏。一方、創業家側の則定氏は、

「雇われ社長と創業者とでは、別の基準があって然るべきではないでしょうか。青臭い法律論だけで考えるのではなく、少し実利的に検討してはと、こう語りかけているところです」

 まさに議論は平行線。

 こりゃ“第三幕”以降もしばらく続きそうだナ。

週刊新潮 2016年11月17日号掲載

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