目黒バラバラ殺人 動機となった「被害者」勤務の風俗店

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 S登録。ストーカー被害を訴える相談者の電話番号を、110番受信時のアラートシステムに登録することを意味する語だ。東京・目黒区に住んでいた中元志織さん(24)に対して警視庁がS登録の手続きをしたのは今年7月。だがその約2カ月後、彼女は命を奪われた。犯人の佐賀慶太郎(50)は、いかにして彼女をその手にからめとったのか。

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容疑者は女装した上で待ち伏せし、女性を殺害した(イメージ)

 10月25日、死体遺棄容疑で警視庁に逮捕された、中元さんの元交際相手の佐賀には、「風俗好き」という一面があった。

「彼がよく使っていたのは埼玉県の西川口にある派遣型風俗、いわゆるデリヘルです。そこは数千円で30分のプレイを楽しめるという“激安”を売りにしている店ですが、彼は90分など、長時間の予約を入れてくれる、女の子にとっては悪くない客だった。ちなみに予約する際は佐賀ではなく、偽名を使っていた」

 そう明かすのは、西川口の事情通である。

「佐賀はホテルの部屋でお湯を沸かしながら女の子を待っていて、到着すると、まずは10分以上、コーヒーや紅茶を飲みながら話をすることが多い。そのうちに女の子が“お風呂に行こうか”と言って2人で浴室に行ってプレイが始まるという流れです。プレイがいたってノーマルなのも、女の子の受けが悪くない理由の1つなのでしょう」

■“なぜここで…”

 事件直前の9月10日にも佐賀はこの店に偽名で連絡してきて、ラブホテルに女の子を派遣させた。そこまではいつも通りだったが、

「この時、佐賀は“ゆりちゃん最近どうしてるの?”と女の子に聞いている。彼女は本当に知らなかったので“私は知らない”と答えたのですが、佐賀は襲いかかって強姦。彼女はそれを警察に相談している」(埼玉県警関係者)

“ゆり”――それこそ、中元さんがこの風俗店で使用していた源氏名だった。

 佐賀が中元さんの近況を探っている、という事実は店の女の子から店長に伝えられた。その後、店長から中元さんに伝えられ、彼女は佐賀からのストーカー被害を相談していた目黒署に連絡。目黒署はホテルや実家への「避難」を勧めたが、佐賀の動きは早かった。9月16日夜、かつらなどで女装した彼は目黒区の中元さんの自宅マンションで彼女を待ち伏せしたのだ。

「佐賀の供述によれば、中元さんの脇腹を果物ナイフで刺すなどして殺害したのは17日朝。その後、風呂場で出刃包丁を使って遺体をバラバラに切断し、スーツケースやバッグに入れた。そして、レンタカーで千葉県野田市の利根川などに運び、橋の上から捨てたのです」(社会部デスク)

 中元さんから「1度逮捕されているのになんで来たの」と言われて口論になった――。佐賀はそうも供述しているが、この“1度目の逮捕”にも、先に触れたデリヘルが関係する。

「2人は昨年11月から交際を始め、今年春まで同棲していた。佐賀と別れる際、中元さんは勤めていた風俗店を一旦辞め、佐賀は“何かできることがあれば”と引越し費用の60万円を用立て、引越しも手伝った。そのため彼女の目黒の自宅を把握していたのです」

 と、捜査関係者は言う。

「が、7月になってから、彼はデリヘルのHPに中元さんらしき女性の写真があるのを発見。彼女を呼び出し、“なぜここで働いているのか”と詰(なじ)って殴り、逮捕されたのです。彼が略式命令を受けて釈放される際、警視庁は中元さんに対するS登録の手続きをした」

 しかし事件当夜、S登録された中元さんの電話から、110番通報が発せられることはついになかった。犯人はあまりにもたやすく防波堤を乗り越え、彼女に辿りついてしまったのだ。

特大ワイド「ふりむけば百鬼夜行」より

週刊新潮 2016年11月10日神帰月増大号掲載

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