取り沙汰される早期解散、年末から年明けに? 煽る二階幹事長、公明党はウェルカムの構図

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安倍首相が戦後最長の内閣総理大臣に?

 佐藤栄作は、戦後最長7年8カ月にわたって総理を務めた。安倍晋三総理(62)が次の選挙に勝てば、この記録を抜く可能性が出て来るという。ここに来て俄(にわか)に解散風が吹き始めたが、その発信源は――。

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 太平洋戦争における戦艦大和の沖縄特攻は、軍令部内の「空気」で決まったという。事ほど左様に、「日本人は、その場の空気に流されやすい」と言われる。

 そんな国民性も影響しているようである。永田町は一たび吹き始めた「解散風」の影響で、今や解散は既定路線という雰囲気なのだ。

 政界通が解説する。

「一部の新聞社や通信社は選挙班を立ち上げているし、選挙事務所探しを始める代議士も出てきた。また、財務省が作ったとされる、解散日と投開票日の4パターンを記した極秘メモも出回っています。早くも選挙モードに突入した感がある」

 むろん、官邸や自民党の重鎮が解散論を唱えなければ、解散風は吹かない。例えば、安倍政権のナンバー2、麻生太郎・財務相兼副総理は、周囲にこう漏らしている。

「解散はやれる時にやるべきだ。時期を逸すると、ズルズルと行ってしまう。この年末年始はやるタイミングだ。そう考えない政治家は失格だ」

 早期解散論は、麻生大臣の持論だそうだが、政治部デスクによれば、

「麻生さんは2008年9月に総理に就任し、当初は直ぐに解散に打って出るつもりでした。ところが、リーマンショックが発生。当時、選対副委員長だった菅(義偉)さんらが先送りを主張し、それに従った結果、追い込まれ解散となり、自民党は下野することになった。それがトラウマになっているのです。今年の初めから衆参のダブル選挙を主張し、実際、参院選前には安倍総理に進言もしている。今度の発言もその延長線上にあるのです」

自民党の二階俊博幹事長

■発端は公明党

 とはいえ、麻生発言は、あくまで内輪での話。そもそも解散風を吹かせたのは、公明党だという。

「発端は9月17日の公明党大会。その席で山口代表と井上幹事長が『衆院選は常在戦場の心構えだが、本日より全議員が一層、構えを強くしなければならない』と語りました。これがある意味で号砲となり、我々は色めき立ち、解散話の取材を始めました」(同)

 一方、この動きに呼応するように自民党の二階俊博幹事長も動き始めた。

「各社の政治部長との懇親会の席で、二階さんが『総理から来年1月に予定されている党大会を3月に延期するよう指示された』と明かしたのです。理由なしに党大会が延期されるわけがない。当然ながら、出席者の脳裏には14年12月に総選挙が行われた際も、1月の党大会が3月に延期されたことが過(よぎ)ったという。ただ、14年と違うのは、12月15日に日ロ首脳会談の日程が入っていること。とすれば、年末から年明けの解散しかないと読み解かざるを得ないわけです」(同)

 その後、事ある毎に解散風を吹かせ始めた二階幹事長だが、

「10月10日には『今、(選挙の)準備に取り掛からない人がいるとすれば、論外だ』と言い始めた。ただし、早期解散に言及したのは、二階さんの独断によるもの。安倍さんと打合せたものではありません」(同)

 それにしても、衆院議員の任期満了は18年12月である。まだ2年近くあるというのに、何故、この時期に解散なのか。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、

「現状を考えると、解散を打つのにかなり良いタイミングだと思います。最大野党の民進党は、蓮舫さんが代表に就任し、野田さんが幹事長に抜擢された。しかし執行部は選挙戦略がバラバラで、総選挙になれば自民党の勝機です。12月の日ロ首脳会談で、北方領土問題が解決に向けて動き出せば、歴史的偉業となり、支持率が上昇することは間違いないでしょう」

■創価学会の記念式典

 確かに、解散は総理の専権事項だが、実際やろうとした時には、公明党の存在は無視できない。

「来年7月には、東京都議選が控えています。公明党や創価学会にとって、都議選は国政選挙並みに重要な意味のある選挙です。彼らのことを考えると、都議選の前後3カ月は解散を打つことはできません」(同)

 では、都議選の3カ月後なら良いかといえば、

「18年1月2日には学会の池田大作名誉会長が、90歳の誕生日を迎え、記念式典が行われます。式典は盛大なもので、準備に半年かかると言われています。つまり、公明党と学会は都議選が終わると、式典の準備で忙しくなる。選挙どころではないのです。18年1月以降は、衆院の任期が残り1年を切る。レームダック解散になる可能性があり、解散のタイミングとしては宜しくない」(公明党関係者)

 公明党や学会にとっては、早期解散はウェルカム。それを援護射撃するかのように、二階幹事長が解散を煽る構図が浮かび上がるのだ。

特集「首相官邸の外側にしか吹いてない『ドーナッツ解散風』」より

週刊新潮 2016年11月3月号掲載

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