中日新聞の「新貧乏物語」捏造 読者からの1000万円“寄付”はどうなる

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 記者本人の取材力が“貧困”だったということか。12日、中日新聞と東京新聞の社会面の隅に〈「新貧乏物語」の一部を削除します〉と書かれたお詫び記事がこっそりと掲載された。他紙の社会部記者が言う。

「新貧乏物語とは、中日と東京新聞に年明けから掲載された大型連載です。1916年に大阪朝日新聞で連載された河上肇の『貧乏物語』になぞらえ、現代の貧困問題を取り上げました。新聞協会賞にも応募、9月には貧困ジャーナリズム賞も受賞しました(後に返上)」

 問題になった記事は5月19日付の中日新聞「病父 絵の具800円重く」で、ある中学3年生の苦境が明かされている。かいつまんで説明すると、父が脳梗塞で倒れ、収入が激減。絵の具など教材費も払えないほどの暮らしになり、バスケ部の合宿代1万円が払えないこともあったという。

 ところが、家族からの指摘で教材費や合宿代も払えない、といった記述が嘘と発覚。その原因を先のお詫びでこう釈明している。

「記者は『原稿を良くするために想像して書いてしまった』と話しています」

 つまり、話の根底が崩れてしまったわけだ。中日新聞の関係者は、

「捏造したのは、岐阜支社にも赴任していた若手の男性記者で訂正記事をよく出すことで有名だった。現在は本社で処分を待つ身です。大型企画に取材班として加わり、気負いもあったのでしょう」

 一方で、こんな逸話もあった。先の記者が続ける。

美談が台無し…

「1月に掲載された第1部を読んだ匿名の読者から、苦しむ若い方へ届けてほしいと、1000万円が東京新聞社会部に届いたのです」

 結果、このお金は子どもの貧困対策を行っている公益財団法人あすのばに寄付され、貧困家庭への給付事業と熊本地震の支援にあてられることになっていた。好意にとんだケチがついた格好だが、

「お金は東京新聞からお預かりして、準備をしているところです。今回の記事で、支援が中止になることはありません」(あすのば)

 せっかくの美談が台無し。

週刊新潮 2016年10月27日号掲載

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