空気で膨らむ兵器 “かく乱”需要でロシア軍が導入

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 兵は詭道なり。ν(ニュー)ガンダムを駆るアムロ・レイは指先より乗機そっくりのダミー・バルーンを射出、敵を翻弄する。本物同然の兵器が突如出現すれば敵は混乱、攻撃力はゼロでも敵兵力の分散や弾薬の消耗を狙える。

 目的を同じうして、ロシアの民間企業が新兵器を開発した。MiG31戦闘機そっくりの囮(おとり)を5分で登場させ、5分で撤収できる代物だ。

よく見てみると…

「素材は布です」

 とは元々熱気球を作っていたこの会社の広報担当者。

「電動ポンプで袋に空気を送り込み、あるいは空気を抜いて兵器を出現させたり消したりするのです」

 いわば風船。長距離地対空ミサイルシステムS-300やT-80戦車などもラインナップ。イグ・ノーベル賞級のジョークと思えば、ロシア軍はこれら“張り子の虎”を真顔で導入している。

近くに寄れば確かに張りぼて

「納入数などは軍事機密なので答えられないんです」

 と担当者氏はすまなそうだが、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は言う。

「軍事衛星やドローンの発達により、現代の偵察能力は格段に上がっています。そこをかく乱したいという需要は理解できます」

 現にこの新兵器、300メートル先からでは本物と見まごう仕上がり、撃たれて穴が開いてもしぼまない。常時ポンプで空気を送り込んでいるからだ。赤外線センサーを欺くため、熱を発する機構も備えている。

「ただ、今の技術に通用するかは未知数ですよ」(同)

 張り子の虎は、平時の玩具であって欲しい。

週刊新潮 2016年10月27日号掲載

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