テレビになる棚、肉を焼けるテーブル…パナソニック「IoT」住宅

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 リビングでテレビを観る父親と子供たちを横目に、母親はキッチンでフライパンを握り料理の腕を振るう。平凡な家庭のごくありふれた日常だが、数年後にはそんな光景が変化するかもしれないという。

今年は“IoT”がテーマだった(CEATEC公式HPより)

 今年で17回目を迎える最先端技術の展示会「シーテックジャパン2016」が10月4日から4日間、千葉市の幕張メッセで開催された。会場に足を運んだ経済誌の家電メーカー担当記者によれば、

「これまでは家電見本市の色合いが濃かったが、今年は“IoT”がテーマで昨年までとはまったく違う展示会のようでした」

 最近、巷でよく聞くIoT(Internet of Things)。例えば、家のドアを開けっ放しで外出してしまっても、スマートフォンなどに伝え、施錠してくれる。パソコン等のIT機器とそれ以外の“モノ”が繋がることで、拡がるビジネスチャンスを多種多様な企業が模索しているのだ。

「今回のシーテックではトヨタがロボット技術を披露して注目を集めましたが、パナソニックのブースにも黒山の人だかりができていました」(同)

“IoTが変える暮らしやビジネス”をテーマにしたパナソニックのブースで、来場者の目を引き付けたのは「空間提案エリア」の一角に置かれた透明な棚の引き戸だった。その引き戸には映像が映し出され、リモコンのスイッチを押すと再び透明に戻る。つまり、ネットと繋がった引き戸がテレビにもなるわけだ。

■焼き上がる牛肉

「誰でも、テレビの置き場所に困った経験があると思います。棚の引き戸にテレビを埋め込んでしまえば、そんな悩みも解消できると考えて開発したのがきっかけです」

 こう胸を張るのはパナソニックのスペースメディア戦略室・橘匠実氏だ。

「引き戸に使っているのは、透明有機ELです。有機ELのメリットは“高画質、軽い、薄い、曲がる”点。ディスプレーとして使用されていますが、スイッチを消すと黒くなってしまう。これはスイッチを切った後も、“透明”になるのが画期的なのです」

 透明有機ELを使った「SAKE&WINEセラー」は、セラーの扉に人が近づくと保存されている酒の度数、辛口や甘口などの情報のみならず、お酒に合う料理などがネットを通じて表示される優れもの。だが、来場者を驚かせたのはこれだけではなかった。

 ブース内のテーブルに置かれた牛の生肉が、みるみるうちに焼き上がっていく。まるで手品を見ているかのようで、来場者からは“おー”という歓声が上がる。

「これは『新コンセプトフラットクッカー』という調理器で、IHや調理用鉄板とは全く違います。電子レンジの技術を応用した加熱調理器をテーブルに埋め込み、食材だけを加熱するのです。むろん、加熱温度もネットから設定できます。皿に食材を載せてセットするだけでOKなので、鍋もフライパンも不要。出来立ての料理を最後まで美味しくいただけますし、コンロの口数を心配する主婦の悩みも解消されます」(先の橘氏)

 仰天技術の数々だが、我々が利用できるのはいつの日なのか。パナソニックの広報担当者に聞くと、

「今回は新技術のご紹介ですので、現時点で販売の予定はありません。3年〜5年先に商品化できればと考えています」

 発売後は、IT機器に疎い高齢者なども操作できる“救済策”が準備されているのでご心配なく。

週刊新潮 2016年10月20日号掲載

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