「鬼界カルデラ」海底調査を開始 縄文人絶滅の原因

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“肥後の国”が再び自然の脅威に晒された。周知の通り10月8日、阿蘇山が噴火したのである。噴煙の高さは1万メートルを超え、火山灰は阿蘇市内を覆い、四国まで飛散した。この規模の噴火は、実に36年振り。

「大規模な噴火という一報を聞き“すわカルデラ噴火か”と、身構えましたね」

 とは、科学部記者。

 カルデラ噴火とは、山の下に大量に溜まっているマグマそのものが噴出する噴火形式のことだが、

“カルデラ噴火”の予測を目指す調査が始まった(イメージ)

「もし起これば、膨大な火砕流が発生し、2時間以内に700万人の命が奪われるほどの規模になるとされています。ただ今回は、地下水がマグマに温められて起こる水蒸気爆発と見られる。人的、経済的被害はさておき、火山学的には小規模なもので、日本では頻繁に起こっています。一方カルデラ噴火は、100年に1%の確率で発生すると言われていますが、誰も経験したことがなく、予測は不可能とされています」(同)

 そんな折、困難なカルデラ噴火の予測を目指す調査が、13日から始まった。

 プロジェクトを統括する神戸大学海洋底探査センター長の巽好幸氏(62)の解説。

「今回我々が調査するのは、鹿児島県沖の海底にある鬼界カルデラです。ここの活火山は約7300年前に噴火し、南九州に住んでいた縄文人の絶滅を招いたとされています。調査の目的は、鬼界カルデラの下にある“マグマ溜まり”の形状を正確に測定することです」

 その方法はというと、

「基本的には病院で行うCTスキャンやエコー検査と同じです。船に搭載した装置から地震波を海中に飛ばし、跳ね返ってきたものを測定する。データを蓄積し、分析を重ね、実像を明らかにしていく」(同)

 それにより、マグマ溜まりを継続的に観測でき、膨張や形状の変化から、噴火を予測するという次第。

「ただ、観測方法を確立し、他の火山に応用されるようになるまでには10年、あるいはそれ以上かかる。我々の調査は、その初めの一歩に過ぎません」(同)

 日本列島の異変を知るための“健診”が幕を開けた。

週刊新潮 2016年10月20日号掲載

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