暴力団トップ3人が中華街に集結…会合の狙いは

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六代目山口組の司忍組長

 日本の主要な暴力団のトップ3人が一堂に会したのだから、これは「サミット」と表現するしかない。顔を合わせたのは、六代目山口組の司忍組長、稲川会の清田次郎会長、住吉会の関功会長。会合場所は、横浜の中華街であった。

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 地下鉄みなとみらい線の「元町・中華街」駅を出て、山下公園を背にして「朝陽門」をくぐる。平日でも多くの客でにぎわう中華街で一、二を争う高級有名店「華正樓本店」は、門から徒歩で1分ほどの場所にある。威風堂々とした店構えを見ても、その格式の高さは一目瞭然だ。

 その華正樓本店の周辺が慌ただしくなりだしたのは9月29日午前11時頃で、

「稲川会の幹部が若い衆にあれこれと指示を出して、準備を始めた。店員が店の駐車場のパイロンを片付けたりもしていました」

 と、暴力団に詳しいジャーナリストが語る。

「11時半頃からは黒塗りの車が店のまわりを巡回するようになり、それから1時間ほどが経つ頃までに、店の周辺の角々にコワモテの男たちが見張りに立った。また、少し離れたところには大型警察車両や覆面パトカーも配置されていた」

 山口組の司組長、稲川会の清田会長、住吉会の関会長の3人の他、各団体の幹部も含めた総勢11人が店に到着したのは12時半から45分にかけて。司組長、清田会長、関会長の3人は3階にある「牡丹」という個室、それ以外の8人は同じく3階にある「花梨」という個室に入った。「牡丹」は18畳、「花梨」は23畳ほどの広さで、中央には円卓、壁には水墨画がかかり、部屋の奥一面には磨りガラスがはまっている。

■「外交メッセージ」

「当日、店で食べたのは1人2万円のコースだった」

 と明かすのは、さる暴力団関係者。

「コースの内容は前菜から始まり、フカヒレの姿煮、伊勢エビの塩味炒め、和牛ミニステーキXO醤炒め、あわびの姿煮、北京ダック、チャーハン、デザートです。酒は飲まず、飲み物はもっぱらお茶だけだった」

 司組長らが店から出てきたのは13時50分頃。店の前で挨拶を交わすとそれぞれ車に乗り込み、その場を去っていったが、気になるのは次の1点。

 果たして、主要暴力団のトップ3人は何について語り合ったのか――。

「暴力団トップによる“サミット”と言うと、1992年、山口組や稲川会、住吉会など7団体のトップが極秘会談を行い、暴対法への対応策を協議した例が知られている。今回は92年の時のような明確なテーマはなかったようですが、トップ3人が会うこと自体に意味があった」

 そう説明するのは、先のジャーナリストである。

「背景にあるのは、昨年8月末に山口組が六代目山口組と神戸山口組に分裂したこと。情報戦略に長けた神戸側は“六代目の親戚団体や友好団体がどんどん離反し、こちらに加勢している”との情報を発信し続けてきた。対する六代目側は今回の“サミット”により、稲川会との強固な関係を改めて示し、その上、住吉会とも話が出来ることをアピールした」

 これというテーマは設定されていなくとも、そこには重要な「外交メッセージ」が含まれていたのだ。

「ワイド特集 男の顔は履歴書 女の顔は請求書」より

週刊新潮 2016年10月13日神無月増大号掲載

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