石原元知事の反省に「おっさんの自己弁護」と元副知事 豊洲の交渉役

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 石原元知事は、豊洲の土地を東京ガスから取得するため、交渉を側近の浜渦武生元副知事に任せた。だが、最近、この判断を反省するようなコメントを出している。一方、それを聞いた浜渦氏は、真っ向から否定した。あれれ、この二人、昔は一心同体と言われたはずだが……。

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「趣味は石原慎太郎」という浜渦氏(右)

「浜渦氏が過剰な権限を行使するに至ったのであれば、強く反省しています」

 東京ガスとの交渉について、石原氏は「週刊文春」(9月29日号)に、こう回答している。そこで、浜渦氏に“過剰な権限”について問うと、こう反論するのであった。

「おっさん(石原氏)が勝手に自己弁護で言ってるだけでしょう。実際はものすごく感謝されたんだから。私は、権限もないまま無手勝流でやったんですよ」

“おっさんの自己弁護”だなんて、二人が険悪になっていることを窺わせる。

 それについて語る前に、浜渦氏に東京ガスとの交渉の内幕を語ってもらう。

「私が副知事になったのは2000年7月。直後から私が東京ガスと交渉することになった。担当になって、まず最初に東京ガスの本社(港区海岸)に挨拶に行きました」

 元々、東京ガスには豊洲で商業、住居、オフィスビルなどを念頭に置いた開発を行う計画があり、都からの築地市場の移転計画を拒んでいた。挨拶に行った浜渦氏は、このまま交渉しても埒が明かないと判断。そこで、江東区を味方に付ける必要があると考え、江東区長の説得に成功したという。そして、東京ガスとの再交渉に着手する。

「佐藤栄作元総理の次男、佐藤信二さん(元衆院議員)は、東京ガスの会長だった安西浩さんの娘婿。私は佐藤信二さんから東京ガスの専務を紹介してもらい、専務に『都としては市場の移転先はどうしても豊洲がいい。決めるのはそちらですが、江東区の意見も聞かれたらどうですか』と申し上げたのです。勿論、江東区への根回しが済んでいたからこそ、言えたことですよ」(同)

 これが功を奏し、01年7月、都と東京ガスの間で、豊洲を市場として整備することに基本合意するのだ。

■六奉行

 手練手管の浜渦氏。この人でなければ、東京ガスを口説けなかったはずである。

「石原が都知事だった頃、彼の秘書軍団は『六奉行』と言われていました」

 と、石原後援会幹部。

「実をいうと、六奉行は2つのグループに分かれていました。一つは、石原のためには汚れ役も厭わない、任侠的な昔気質の3人の秘書。これに浜渦が属していました。残りの3人が、石原のヨット仲間、通称『ヨットグループ』です」

 浜渦氏は05年7月、都議会でのヤラセ質問が問題となり失脚したが、

「この時、浜渦のグループは、一人が病死し、もう一人も石原の秘書を辞めていた。つまり、秘書軍団の中で、浜渦だけがヨットグループではなかった。浜渦は彼らとはソリが合わず、ヨットグループも彼を排除したがっていました。浜渦が都庁を去った後は、ヨットグループが都庁を牛耳るようになったので、浜渦は相当悔しかったようですよ。以降、石原と浜渦は昔のような一心同体、ズブズブの関係ではなくなった」(同)

 昔なら石原氏に対し“おっさんの自己弁護”なんて言わなかったはずである。

「でも、彼は大学時代から石原に心酔し、卒業後ずっと秘書をしてきた。石原を見切ることは、自分の生き方をも否定すること。傍目には仲違いしているように見えますが、そう単純なものではないんです」(同)

 これを「腐れ縁」と言う。

「特集 嘘とペテンで盛り土した『豊洲と五輪』7問答」より

週刊新潮 2016年10月13日神無月増大号掲載

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