「小池百合子」金銭スキャンダル(4) 2000万円の物件に3億円の根抵当…知事は“水田氏の私事”と回答

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(2)で触れたとおり、小池百合子東京都知事(64)の金庫番である水田昌宏氏が経営する高崎のマンションは、その特権的な立場があるからこそ入手可能な、不可解な点が多々あるものだった。本件を取材する週刊新潮編集部には、記事化前より、水田氏の代理人より訴訟をほのめかす「警告書」が計4通届いている。

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小池百合子東京都知事(64)

 この過剰とも思える反応こそが案件の重大性、アンタッチャブルさを示しているような気がしてならないが、次に、高崎のマンション、小池氏の練馬の自宅、そして水田氏が所有する外神田のビルの1室を共同担保として、都知事選の翌日にみずほ銀行が3億3000万円の根抵当権を設定したことについて詳述する(図参照)。ちなみにみずほは東京都の指定金融機関である。

 まず気に留めておかなくてはならないのが、高崎のマンションには元々、群馬銀行が4億1500万円の抵当権を設定していたことだ。そこへさらにみずほが3億3000万円の根抵当権を設定したことで、一瞬、7億5000万円近い抵当枠になっているのである。また、群馬銀行の時には「抵当権」だったのが、みずほの時には「根抵当権」に変わっている。

「借金が返せなくなった時に、貸主がその資産を保全する権利が抵当権。複数の債権を継続的、断続的に担保するよう設定されるのが、根抵当権です。根抵当権は、事業主のように、何度も借入する必要が出そうなケースではよく使われます」(司法書士)

 みずほがつけたこの根抵当権を巡っては、設定後、実に慌ただしい動きがあったことが登記簿を見ると分かる。まず、8月18日の受付で練馬の自宅に設定されていた根抵当権が解除されるのだが、その日付が設定日と同日、8月1日となっているのだ。また、9月1日の受付で高崎のマンションに設定されていた根抵当権も解除され(これも8月1日付)、現在、担保として残っているのは外神田のビルの1室のみ。たった2000万円ほどの資産価値しかないビルの1室を担保として、3億3000万円もの根抵当権が設定されているという状況になっているのである。

みずほ銀行がつけた根抵当権の流れ

■「設定と同日に解除」の不可解…小池知事の承諾が必要

 異様な点が多々ある経緯の中でも、専門家が口を揃えておかしいと言うのは、練馬の自宅と高崎のマンションにつけられた根抵当権が「設定と同日に解除」となっていること。

「同日設定同日解除というのは見たことがない。何かよほどのことがあったんだろう、という感じがします」(現役銀行マン)

 特に練馬の自宅は小池氏と水田氏の共同所有。みずほ銀行関係者によると、

「共同所有の物件に根抵当権を設定するためには双方の承諾が必要。今回の場合であれば、原則、小池氏にも銀行に来ていただき、目の前で署名捺印していただかなければ手続きは前に進みません」

“崖から飛び降りる”つもりで臨んだ選挙期間中に、銀行でのんびり署名捺印している暇があったとはとても思えないのだが、一体、どういう理由でこの根抵当権は設定されたのか。

 みずほ銀行広報室は、

「個別の取引内容に関わることについては回答は差し控えさせていただきます」

 と言うのみ。

 水田氏は代理人の弁護士を通じてこう回答した。

「8月1日を設定日とする根抵当権については、設定日同日の解除を原因として既に抹消されており、さらに、みずほ銀行から通知人(水田氏)に対する3億3000万円の融資は一切実行されていません。通知人は群馬銀行からの借入につき、みずほ銀行への借り換えを企図して、上記根抵当権を設定したものの、結局、当該借り換え自体を取り止めることになったため、みずほ銀行への借り換えを前提とした上記根抵当権も不要となりました」

 つまり、根抵当権設定の目的は群馬銀行からみずほ銀行へのローンの「借り換え」だった。が、借り換え自体がなくなったので、設定日同日の解除とした、というわけである。また、根抵当権が設定された8月1日より前、7月14日時点で水田氏は小池氏の政治資金管理団体「フォーラム・ユーリカ」の会計責任者を辞任し、8月時点では、

「既に小池氏の秘書ではなかったことは間違いありません」(水田氏の代理人)

■セオリーから逸脱した取引

 この水田氏側の主張について、ある銀行OBは、

「そもそも、借り換えなのに根抵当権を設定していることからして変です」

 と、疑義を呈する。

「新築マンションなので度々修繕費がかかるということもないし、水田氏は単なる秘書で、他に大々的に事業を行っているわけではありませんからね。そして、群馬銀行の抵当権が4億1500万円だったのに、みずほの根抵当権が3億3000万円というのも解せない。3年で8500万円を返した計算になりますが、ペースが早過ぎます」

 先の現役銀行マンも次のように語る。

「金融機関が融資をする際の原理原則は同時履行。必要書類を揃え、登記の手続きとローンの実行が同時に行われなければなりません。根抵当権を設定するところまでいって、借り換えの必要がなくなったからやっぱり止めます、ということ自体、非常に特異なケースで、同時履行のセオリーから逸脱した取引です」

 そもそも借り換え話がなくなったのであれば、根抵当権は全て解除になっていなければおかしいのだが、今もそれは外神田のビルの1室を担保として厳然と残っている。この点、先のみずほ銀行の関係者は、

「水田氏が今後、不動産取引をする際に借り入れが発生するかもしれないため、根抵当権自体は残すことにしたようです」

 と説明する。しかし、先の銀行OBはこう語るのだ。

「それでは当初と融資目的が変わってしまっており、おかしい。しかも、担保の資産価値と根抵当権の極度額に大きな差が出てしまっており、異様です。そもそも一般人にはこんなことは絶対に起こり得ない」

■「水田昌宏氏の私事」を主張

 小池氏がまさにこれから「都議会のドン」など特権的立場にある人物のカネの問題に切り込もうというタイミングで発覚した、小池氏自身の金庫番の特権的錬金術。これ以上の皮肉はあるまいが、政治評論家の浅川博忠氏はこう話す。

「都の指定金融機関であるみずほ銀行による根抵当権設定が都知事選の開票日翌日であることを考えても、都知事のポストを巡り、利権を享受しようとする思惑が本当になかったのか、と都民に疑問を持たれても仕方がない。小池さん自身が情報公開の必要性を訴えているわけですから、自らの口で説明すべきです」

 小池知事にも取材を申し込んだところ、一連の経緯は「水田昌宏氏の私事」であるとの回答が寄せられた。しかし、マンション経営、みずほ銀行が設定した根抵当権、いずれにも小池氏自身の関与があることはすでに詳述した通り。「水田氏の私事」で済まされる話でないことは、誰より小池氏自身が一番理解しているはずだろうに─―。

特集「改革の旗手に『政治とカネ』! 記事化前から訴訟を匂わす警告書5通! 都知事『小池百合子』金庫番が手を染めた特権的錬金術」より

週刊新潮 2016年9月22日菊咲月増大号掲載

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