ロシアの五輪ボイコットはありえるか? 陸上選手の出場停止で

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 旧ソ連時代から、国家ぐるみでのドーピング疑惑が根強く囁かれながら、「スポーツ大国」として君臨してきたロシア。2014年12月のドイツ公共放送ARDの告発報道に端を発し、昨年11月には国際試合出場を禁じられていた彼の国の陸上選手たちに、ついにリオ五輪の出場禁止が決まった。

「世界反ドーピング機関(WADA)が昨年11月から5月までロシア選手たちに行った調査結果によれば、“組織ぐるみ”の心証は真っ黒、国際陸連は明らかなクロ以外の選手の連帯責任も認めた形です。なにせ2947件の検査中、736件で拒否またはキャンセル、111件で抜き打ち検査回避のため居場所を偽り、52件で禁止薬物が検出されたのです」(国際部記者)

 あるケースでは、“クリーンな”尿を容器に入れ、“体内に”隠し持っていた女子選手が途中で中身を床にこぼして露顕、あげく、検査官を買収しようとしたという。

 プーチン大統領はこの決定に「関係ない選手まで苦しませるのか」「不当だ」と息巻き、“無罪”を主張する女子棒高跳びの世界記録保持者エレーナ・イシンバエワは「人権侵害」と非難、スポーツ仲裁裁判所(CAS)への提訴を示唆し、ムトコ・スポーツ大臣は国際陸連を「解散すべきだ」と言い放った。ムトコ氏はロシア選手が締め出されれば“ボイコットの時代に逆戻りだ”と発言していた人物だ。

「可能性は低いでしょう」

 とは、あるロシア通の国際政治研究家。

「東西冷戦の時代ならいざ知らず、複数国でボイコットなど考えられませんし、ロシア単独でもどうか」

 というのも、と続ける。

「テニスのシャラポワしかり、陸上以外の競技、水泳やレスリングでも禁止薬物によるロシアの処分者は大量です。WADAがそちらでも本腰を入れればロシアもボイコットのカードを切るかもしれませんが、今はWADAもそこまで強硬な手段は取らないのでは」

 ロシアがロンドンで獲ったメダルは陸上で18、全体で82。陸上以外を守るのがまずは最優先ということか。

週刊新潮 2016年6月30日号掲載

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