トランプ大統領は共産党の踏み絵となる 百田尚樹氏インタビュー(2)

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■共産党とトランプの関係

百田尚樹氏

 前回に続いて、百田尚樹氏のインタビューをお届けしよう。

――『カエルの楽園』については、最近、現実が小説に近づいてきた、といったことを書いていらっしゃいました。ドナルド・トランプ氏が大統領候補となり、日米安保破棄を言いだしているあたりは、確かに小説とオーバーラップしています。トランプ氏が主張しているとされる「在日米軍の撤退」についてはどう考えていますか。

 私は、広い視野で見れば、在日米軍がいることで、かなり日本は得をしていると考えています。

 確かに日本は少なくない金額を米軍のために費やしていますが、それでも自前で装備するよりもはるかに安上がりです。今の米軍と同じような装備を自衛隊が国内で展開したら、とんでもない予算、少なくとも数十兆円が新たに必要になるでしょう。自前で何でも揃えたら大変です。

 本当にトランプ氏が大統領となって、「在日米軍の撤退」を唱えた時に、共産党や社民党といった政党は踏み絵を踏まされることになるのではないでしょうか。

 これまでの「米軍は要らない」といった主張からすれば、大賛成するのが自然でしょうが、果たしてそうなるのか。そもそも現時点で、トランプ氏に賛意を示してはいませんね。

 トランプ大統領が誕生すれば、これまで無責任に安全保障についての意見を言っていた政党は、旗幟を鮮明にせざるをえなくなるでしょう。

――ただ、そもそも米軍が日本を守るということに懐疑的な見方もあります。尖閣を中国が侵略したところで、米軍は巻き込まれるのを嫌がって、戦わないのではないか、という意見を言う人は少なくありません。

 とりあえず現在の時点で、アメリカは公式に「尖閣は日米安全保障条約の範囲内」と明言しています。

 実際に、本当に出動するかどうかはわかりませんが、それは中国もわからない。だからこそ、ちょこちょこと揺さぶりをかけたりして、こちらの出方を見ているわけです。

■「中国は攻めてこない」論の誤り

――「大国となった中国がわざわざ攻めてきたりはしない」と考える人もいますが……

 私は、在日米軍がいなくなれば、高い確率で尖閣や沖縄が侵略されると考えていますが、実際にどうなるか、もちろん現時点では断言できません。

 問題は「中国は攻めてなんか来るはずない」と決めつけて、それに賭けてしまうことのリスクが大きすぎるということです。

 競馬で100円の馬券を買うのとはわけが違うんです。「攻めてこない」に賭けて、備えを怠っていて、万一攻められたら目も当てられません。

「中国は攻めてなんか来るはずない」と主張する人たちは、見ているスパンが短すぎるとも感じます。

 ひょっとすると、中国、韓国、北朝鮮がとても親日的な平和国家に生まれ変わるということだってあるかもしれません。

 ではその素晴らしい状況が来れば、軍隊は不要になるかといえば、そんなことはないでしょう。それらとは別の超軍事国家が一夜にして誕生するかもしれません。

 国家は常にそうした脅威に対して備えておく必要があるのです。

 このような考え方を「右翼だ」と仰る人もいるのでしょうが、実際に世界中の国がそのように考えて、軍隊を常備しているのです。

 ヨーロッパではこの数十年、ほとんど国同士の戦争は起きていません。それでも「もしも何かあったら」と考えて、軍隊を持っているのです。

 長年、戦争をしていないスイスが徴兵制をとっているのは、以前にお話しした通りです。

 軍隊というのは、「当分、平和そうだからいらないだろう」といった安易な考えで、作ったり、無くしたりできるものではありません。

 自衛隊のパイロットの方を取材したことがありますが、彼らは常に訓練を重ね、練度を上げています。第一線のパイロットとしての寿命はとても短い。彼らの多くは、実際の戦闘などは経験しないまま、退官していきます。常に「万が一」のために厳しい訓練を重ねているのです。これは世界中の軍隊が同様です。

――いわゆる「護憲派」、百田さんのいうところの「9条信者」の中には、「万が一他国に攻められたら、戦わずに降参してしまえばいいじゃないか」と言う人もいますね。

 多分、そういう人がイメージしている「占領」というのは、戦後のGHQによる占領なんでしょうね。あの占領下、米軍は日本人に乱暴なことをして、色々な事件を起こしていたとはいえ、それでも占領軍としてはかなり穏やかな振る舞いだったと思います。

 そのような占領であれば、降参してもいいや、と考えるのかもしれません。

 しかし、仮に中国が占領したとして、そんなことで済むのでしょうか。チベットや新疆ウイグル地区はどのような目に遭ったのか。別に中国でなくても、ソ連が占領した地域で何をしたのか。そういうことを知らないのでしょうか。

「民族浄化」という名目で、多くの民族が消し去られたのは、そう昔の話ではありません。

「平和主義者」の方々は、子孫に対して責任を持つつもりがあるのであれば、もう少し総合的な勉強をしていただきたいと思っています。

デイリー新潮編集部

2016年6月10日掲載

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