日本政府が払わない安田純平さんの身代金 無償で解放はあり得るのか

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《助けてください これが最後のチャンスです》

 日本語で手書きされたメッセージを両手に、オレンジ色の服を着せられた男性の視線は、レンズの奥をじっと見つめていた――。

 昨年6月から内戦下のシリアで行方不明になっているジャーナリストの安田純平さん(42)。本人と思われる画像が、ネット上で公開されたのは、日本時間の5月30日未明のことだった。

 全国紙記者が言う。

「今年3月、安田さんと見られる動画が、フェイスブック上にアップされました。今回も、その時と同じシリア人の男が公開したのです」

 男は、安田さんを拘束しているとされる過激派組織「ヌスラ戦線」に近い仲介者から、画像を入手したと説明。各メディアの取材に、

「仲介者の言葉として、安田さんを拘束して半年経つが、日本政府などに要求した身代金1000万ドル(約11億円)の交渉が進まない。今回は、期限を1カ月と決め、それを過ぎれば、より一層過激な『イスラム国』に引き渡す可能性があるなどと話しています」(同)

 昨年、イスラム国に殺害された、ジャーナリスト・後藤健二さんの時もそうだったように、今回も日本政府に身代金を払う意思はないとされている。

「このまま時間が経てばアウトです」

 というのは、安田さんの解放に向けて、現在も救出活動を続けるジャーナリストの常岡浩介氏だ。

「5月上旬、ヌスラ戦線に誘拐されていたスペイン人記者3人が解放されたと報じられました。どうも身代金を払ったようですが、実は昨年末、同じくヌスラに拘束されていたポーランド人ジャーナリスト2人が、無償で解放されているのです。その時は、ヌスラの協力組織とされるアフラール・シャームのチェチェン人司令官が協力してくれたことが分かりました」

 ただ、ヌスラ側は後になって解放が失敗だったと考えたようで、4月にその司令官を殺害したという。

「司令官一人で動いたわけではなく、様々な協力者と連携して実現したわけです。より内部に近い協力者を付ければ、似たようなことはこちらにもできるのではと話しています」(同)

 画像公開日から起算して、タイム・リミットは6月30日。

週刊新潮 2016年6月9日号掲載

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