日本軍、GHQが検閲カット『無法松の一生』18分が蘇る上映会

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〈映画『無法松の一生』切り裂かれた18分。〉と題された上映会が5月27日、東京・東中野のポレポレ坐で開催される。しかも、戦時中に撮影された名作を流すだけではない。

「私が“無法松”を演じるんですよ」

 とは本誌(「週刊新潮」)スクリーン欄でお馴染み、映画評論家の白井佳夫氏である。もっとも、演じるとはいっても、シナリオの朗読のこと。

「シナリオにあるシーンが、フィルムに残っていない。それを再現します」(同)

 1943年に封切られた作品である。脚本は伊丹十三の父で映画監督の伊丹万作。自分で撮りたかったが病身のため、友人の稲垣浩監督に託した。主演の無法松こと松五郎には田村3兄弟(高廣、正和、亮)の父で大スタアの阪東妻三郎。

 ケンカと酒と博打が大好きな暴れん坊の俥夫・松五郎が、軍人の夫を亡くした夫人とその一人息子(まだ9歳の長門裕之)のため、それまでの生活を改め献身する物語。だが、当時の軍部に検閲カットされていた。

「松五郎が夫人に抱く恋心を回想するラストシーン。市井無頼の輩が大日本帝国陸軍将校の未亡人に、恋慕の情を抱くなど以ての外、というわけです。10分43秒カットされたことは検閲官が残した『映画検閲・認定時報』で確認できます」(同)

 18分間では?

「残りは戦後、民主化を進めるGHQの検閲でカットされているんです。どんなシーンだったかは見てのお楽しみ。軍国主義であれ、民主主義であれ、あらゆる検閲がいかに愚かなことかわかりますよ」(同)

 稲垣監督は、これらのカットが余程気に入らなかったとみえ、戦後、三船敏郎主演でリメイクしている。

「カラーになって、セットも豪華。でも三船さんではヒューマニズムが足りない。それでも、このリメイク版がヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞してしまうのだから、いかにオリジナルの出来がいいかわかろうというもの」(同)

 白井氏の解説、秘話、ドリンク付きで3000円(当日3500円)、お早めに。

週刊新潮 2016年5月26日号掲載

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