オバマ大統領の広島訪問は期待できない…イメージアップに被爆地が使われるのがオチ

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 就任時は“神の子”とまで讃えられたが、その後は失政の連続。権威失墜のまま、来年1月までの任期を終えそうなオバマ米大統領(54)であるが、その落ち目の大統領が久々にぶち上げた“花火”が「広島訪問」であった。

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オバマ米大統領

〈オバマ氏 広島へ 米現職大統領 初の訪問〉(5月11日付 朝日新聞朝刊)

 この日の日本の主要紙は、オバマ大統領が伊勢志摩で行われるサミットを終えた5月27日に広島を訪れることをいずれも1面トップで報道した。

「今回の訪問は、実に7年越しのものでした」

 と、政治部デスクが解説する。

「2009年に大統領に就任し、『核なき世界』の宣言でノーベル平和賞を受けたオバマは、『広島訪問』についても検討し続けてきました。事態が動いたのは、昨年4月。訪米した安倍首相と岸田外相がオバマ大統領とケリー国務長官に、広島訪問を勧めた。任期終了が見え、“レガシー”作りを急いでいたオバマサイドは本腰を入れ始めたのです」

■大統領の2つの懸念

 日本側にとっても、現職大統領を広島に招くことは、「強固な日米同盟」をアピールする絶好の機会。両者の利害は一致したが、大統領には懸念が2つあった。

 訪問によって、「原爆投下」を未だ正当化するアメリカの世論が沸騰しないか。そして逆に、日本の「被害者」との世論を呼び覚まさないか、ということである。

「前者については、アメリカはそれ以前から8月6日の平和記念式典に大使を出席させて世論を探っていました。その上で、4月にはサミット外相会議で広島入りしていたケリーを“露払い”として平和記念公園に行かせた。それでもオバマ政権に対する反発は意外なほど生まれなかったのです」(同)

 後者について動いたのは、あの“有名大使”である。

「ケネディ大使は何度も官邸を訪れ、“日本は本当に歓迎しているの?”“まだ『謝罪しろ!』『切腹しろ!』と言う怖い人がいるの?”と確認していた。訪問が“寝た子”を起こすのではないか、ということが最大の懸念だったのです」(同)

 結果、大きな反発はない、と判断したオバマサイドは、GW明け、やっと訪問を決めたというワケなのだ。

 とにもかくにも、こうして難産の末に実現した訪問だから、広島でこれまでにない“何か”が行われる、と思うのは当然である。

広島県広島市中区にある原爆ドーム

■「舞台装置」がオチ

 しかし、

「自らをアピールする“核なき世界”のスピーチは確実に行われますが――」

 と言うのは、さる外務省の関係者。

「その他は、ケリーがした以上のことは期待できないでしょう。つまり、平和記念公園内の『死没者慰霊碑』への献花、『平和記念資料館』の参観、あとは『原爆ドーム』を訪れるかどうかといったところ。肝心のスピーチでも、ホワイトハウスの高官は早々に“謝罪はしない”“原爆投下の決断についての再評価もしない”と明言し、“戦時中に亡くなったすべての人々を哀悼する”程度の表現に留まる見通しです。そして、脇には、常に安倍首相が付き添うことになるでしょう」

 何のことはない。

 実際は、場所が広島というだけで、従来より踏み込んだ発言や行動は何もなし。日米両国首脳のイメージアップに、被爆地が「舞台装置」として使われるのがオチだというのである。

「特集 『ケネディ大使』は『オバマ切腹せよ』の世論を心配? 謝罪要求は十八番なのに『朝日新聞』はなぜダンマリ?『オバマ大統領』が広島でやるべきこと」より

週刊新潮 2016年5月26日号掲載

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