「匠大塚」開業でターゲットの中途半端な「大塚家具」は生き残れるのか?

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 骨肉相食む“父娘バトル”は収まるどころか、ますますヒートアップの様相を呈している。株主総会、法廷闘争に続いて、新たなラウンドを告げるゴングが鳴り響いた。父・大塚勝久氏(73)が、娘・久美子氏(48)率いる「大塚家具」から顧客を奪うべく、新会社「匠大塚」を立ち上げたのだ。

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大塚久美子氏

 大塚家具は4月22日から、“大感謝会”と銘打ち、セールを開始。その翌日には新宿ショールームで、開店と同時に久美子社長が、“いらっしゃいませ”と頭を下げつつ、来客を出迎えた。だが、肝心の客足は大盛況というにはほど遠い状況だった。

「昨年3月の株主総会で、久美子社長は父親を追い出すことに成功すると、“お詫びセール”をしょっちゅう行い、メディアにも頻繁に登場して、お家騒動の話題性で、一時的に売上を伸ばしました」

 と解説するのは、経済誌の記者だ。

「ですが、今年に入ると、売上の前年比割れが続いている。その理由の一つはやはり、セールを連発し過ぎたこと。いまとなっては目新しくもなく、お客さんに来てもらえなくなってしまった。本来、家具は洋服とは違って流行り廃りがないので、セールで売り尽くす必要はないのです。また、久美子社長はカジュアル路線の中価格帯を目指すとしていますが、すでにそこでは、『ニトリ』や『イケア』が確固たる地位を占め、割って入るのは簡単ではありません」

■潤沢な資金

大塚勝久氏と長男の勝之氏

 一方、父・勝久氏は20日、あらたに「匠大塚」を立ち上げ、事業展開していくことを明らかにした。

 経済誌の記者が続ける。

「会長に就任した勝久さんは意気揚々として、“志をともにする仲間と新たな一歩を踏み出した”と表明しました。実際、匠大塚は、当初5人でスタートしましたが、すでに大塚家具から50人の社員が移ってきている。商品開発部長や営業部長などに就いたのも、もともとは大塚家具の幹部だった社員です」

 さらに、資金面も潤沢なのである。社債償還裁判で、11日に久美子社長側に全面勝訴し、利子なども含め17億円を手にしたのは、ご存じの通りだ。その他にも、勝久氏はこれまでに大塚家具の株式を大量に売却し、20億円以上を得ているという。

「それでもまだ、勝久さんは10%弱の株式を保有する大株主です。久美子さんは、株主総会のプロキシーファイトに勝つため株主に対し、大幅増配となる通期80円を約束しました。結果的に、勝久さんは年間約1億4500万円の配当を得ることになったわけです。久美子さんにしてみれば、社員を奪われたうえに、敵を利する格好になってしまい、歯ぎしりしたくなる気持ちに違いありません」(同)

 勝久氏はその資金を元手に、建築事務所やインテリアコーディネーターなどプロ向けのデザインオフィスを東京・日本橋に開き、今夏には、生まれ故郷の埼玉・春日部市に大型店舗を出店するのである。

 匠大塚の関係者が明かす。

「高級家具に魅力を感じる客層は、こちらに流れてくるはずです。客層のターゲットが中途半端な大塚家具が、これから生き残っていくのは難しくなるのではないでしょうか。本来、温和な勝久会長ですが、家族だからこその愛憎のもつれで、久美子さんとの間には修復できない亀裂が生じてしまった。ここまで来ると、仲直りは不可能。勝久会長は本気で、大塚家具を潰す気なのかもしれません」

 もはや、単なる親子喧嘩では済まないのである。

「ワイド特集 淑女たちの疾風怒濤」より

週刊新潮 2016年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号掲載

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