熊本地震にも生物による前兆現象はあったのか? 突如出現したサワガニ他

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 熊本で大きな地震が発生することも、その後、さらに大きな本震が待ち受けていることも予知できなかったわれわれ人間。その裏で、生き物たちは「何か」を感じとっていたのか――。

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 熊本県宇土(うと)市で化粧品店を営む渡辺稔夫さん(70)、節子さん(69)ご夫妻。節子さんが店内で奇妙な光景を目撃したのは、前震が発生する前日のことだった。

「まず、店の中をサワガニが3匹くらい歩いていた。それから、今度は小さな家ネズミが3匹、ちょろちょろ歩きよる。普段はそんな生き物を見ることはないので、主人と“何か起こるのかねえ”なんて冗談で言っていたんです。それから、もう7年くらい飼っているデメキンの“メルモちゃん”が頭を下にし、縦になって泳いでいました」

 これらの事象は何を意味するのか。動物の脳や感覚の研究をしている宇都宮大学農学部の杉田昭栄教授は、

「動物の地震予知行動や前兆行動については、科学的には解明されていません。ただ、動物の感覚は人間よりも優れている。動物の体に生えている毛の根本には“そよぎ”を感じる神経が密に分布している。2011年8月24日、ペルーのコンタマナでM7・0の地震が起こる8日前に国立公園からネズミ等の『げっ歯類』が消えたという報告もあります」

 サワガニとデメキンについてはどうか。

「サワガニには毛が生えていないので、感受のメカニズムが分からない。だから何ともいいづらいところがありますが、地面や沢の変調を感じて、逃避行動に出た可能性が考えられます。例えば、人間には分からない程度の水位や水質の変化です。また、金魚にも毛はないですが、水粒子の動きを感じる感覚器がある。で、人間には及びもつかない変化を感じ、変わった向きに泳いでいたのかもしれません」(同)

 ちなみに生き物たちの奇妙な行動を目撃した渡辺夫妻の店は本震の影響でシャッターが壊れ、2人は一時店内に閉じ込められたが、ほどなくして屋上からハシゴを使って脱出に成功した。

「ワイド特集 『熊本地震』瓦礫に咲く花」より

週刊新潮 2016年4月28日号掲載

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