震災の熊本繁華街で「白木屋」と「笑笑」だけが営業していた理由

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 未曾有の「断層連鎖」で、日本全体が暗い雰囲気に包まれた感が否めない。結果、自粛ムードが蔓延。当然のように熊本市内の繁華街にも重苦しい空気が垂れこめ、「シャッター街」と化したが、そんななかでも灯りを点(とも)し続けた居酒屋があった。

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 ホテル、居酒屋、キャバクラ……。熊本駅近くにある「熊本銀座通り」は、熊本市の繁華街の中核を担うまさに目抜き通りであり、飲食店だけでも約200の店が軒を連ねる。しかし、前震後の15日夜の段階では、

「さすがに9割方の飲食店が店を閉めていました。店内のボトルが割れたり、天井にぶら下がっていたカラオケ用のスピーカーが落下するなどして、各店舗、被害を受けましたからね」(商店関係者)

 それでもこの時点では、

「市内の有名ソープランドで、前震の真っ最中に『プレー』していたお店の女の子が、ローションで滑って怪我をしたらしい」(同)

 などという情報が「笑い話」として広められるほど、熊本の夜の街にもまだ幾許(いくばく)かの「余裕」が残っていた。

 ところが、そこに16日未明の本震が襲い掛かったため、その晩は9割どころか開いている飲食店はほぼ皆無の状態となる。「水商売」にとっては致命的な断水が発生したからだ。そんな状況の熊本銀座通りでも、

「確認できている限りでは、大衆居酒屋チェーンの『白木屋』と『笑笑(わらわら)』だけが営業を続けていました」(同)

 例えば「白木屋熊本銀座通り店」では、食事メニューが枝豆、たこわさび、焼き鳥、唐揚げ、サラダ、ピラフの「2000円コース」と、これに刺し身が加わった「2500円コース」に限られていたが、ドリンク類は全種類供されていた。他店が店を閉めるなか、なぜ両店は開けることができたのか。

■大分出身の社長

「他県の店舗からも物品を運び、また前震があった時点でミネラルウォーターを買い込んでおいたんです」

 こう説明するのは白木屋の店長だ。

「その水を調理用と洗い物用に分けて使ったり、自動皿洗い機も動かないので手でお皿を洗ったりして何とかやっています」

 同店とともに営業していた笑笑も、同じ「モンテローザ」が経営している。

「(モンテローザの)社長が、『こういった震災の時でも、皆さまのために店を開けるべきだ』と言い、全ての食事メニューは提供できませんが頑張っているところです」(同)

 モンテローザ総務部は、

「当社は、東日本大震災などの過去の経験から、大変な状況下であっても、飲食を提供する者として、一日も早くお店を開店させホッと出来るひとときをすごしていただくことが、地域の皆様に一番喜んでいただけると信じております」

 なお、同社の大神輝博社長は大分出身である。

 自粛する者、閉店を余儀なくされる者あれば、「逆張り」する者あり。大地震は、夜の世界にも「断層」をもたらしたのだった。

「ワイド特集 『熊本地震』瓦礫に咲く花」より

週刊新潮 2016年4月28日号掲載

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