仏オランド大統領 「売春OK買春は罰金」法案可決で支持率下落

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 ゾラの名作『ナナ』では、街娼となった主人公はパリを歩き続ける。立ち止まって客を引けば捕まるからだが、鹿島茂氏の『パリ、娼婦の街』によると、殷賑を極めたこの“快楽の都”には古くから高級娼婦、公娼、私娼の別があった。公娼は1946年に廃止されたが、以後も街角で“花”を売り続ける女たちは「花の都」のもう一つの顔でもあった。

「その娼婦たちの猛反対の中、仏下院で6日、買春禁止法案が可決されました。売春が合法となりますが、買春は最高1500ユーロ(約18万円)の罰金。再犯だと最高3750ユーロ(約46万円)と罰金が倍増します」(国際部記者)

 スウェーデンが最初に導入した“買春禁止法”は、今やノルウェー、アイスランド、英国などにも広がる。客が減れば娼婦の商売があがったりになるのは当然で、スウェーデンでは導入後、娼婦が3分の1以下になったという調査もある。

「フランスでは3万~4万人が売春に従事しており、その8割以上が移民系。人身売買の被害者が大半を占めると言われ、今回の法案ではこうした外国人娼婦に在留許可を交付、補助金も払うとしています」(同)

 悲惨な境遇にある性労働者を救うという志を持つ法案だが、提出は2013年。議論に3年も費やしている。

 パリ在住のジャーナリスト、広岡裕児氏は言う。

「社会党のオランド大統領は弱者救済で支持率を上げようとしたのでしょうが、野党の右派からはもちろん、与党のエコロジストにまで反対されてしまいました」

 街娼が減っても地下化する、管理売春が横行する、娼婦の健康管理が疎かになり、HIV等の蔓延を招く……などともっともな理由。

「スイスやドイツのように売買春が合法の国もあり、欧州も考えはさまざま。国民の反感はむしろ、有効な経済雇用対策を打てないのにこうしたスタンドプレイに走る大統領に集中しています。支持率はもはや20%を切りました」(同)

 そのオランド、大統領選を来年に控えている……結果など、言わぬが“花”か。

週刊新潮 2016年4月21日号掲載

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