名刺代わりの本塁打「マエケン」が悔やむ出来高契約

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 子供の頃、宝物にしていた鉛筆を思い出した。

 端に消しゴムが付いていて、これが実に使いやすく、本職の消しゴムが嫉妬するほどに愛用したものだ。

 閑話休題。4月6日、ロサンゼルス・ドジャースに移籍した“マエケン”こと前田健太投手(28)が鮮烈なデビューを飾った。パドレスを相手に先発し、6回無失点で初白星。上出来だが、それ以上に日米メディアを沸かせたのは、2打席目に放った本塁打だった。

「今季のチーム第1号。しかも変化球でしたからね」

 とスポーツ紙デスクが興奮気味に語る。

「マエケンはPL学園時代に四番を打っていました。広島カープ在籍8年間で2本しか本塁打を打っていませんが、これは相手投手がマエケンを“9番目の野手”とみなして本気で投げていたから。春季キャンプでは、通算355勝のマダックス特別補佐に打撃投手を務めてもらい、連日バッティング練習に励んでいました」

 9日のジャイアンツ戦では、延長に突入したところで代打として待機。機会が訪れる前に試合終了となったが、ロバーツ監督は“消しゴム付き鉛筆”がお気に召したようだ。“代打・マエダ”を拝める日は近い。

「もっとも、収入に関して言うと、ベース年俸がたった300万ドル(約3億2400万円)のマエケンにとっては、満額で8年1億620万ドル(約115億円)に達する出来高が重要。しかし、その対象はあくまでも先発回数と登板イニング数であって、打棒は含まれていません。こんなことなら、契約に“本塁打1本につき何ドル”という条項を入れておけばよかったのにね」

 さて、冒頭に書いた鉛筆だが、酷使しすぎたのだろう、消しゴムがスポッと抜けてしまった。これでは、ただの鉛筆である。

 それからその鉛筆をどうしたか? 全く記憶にない。

週刊新潮 2016年4月21日号掲載

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