寺内樺風と揃って外出も 2年間監禁されていた少女は「ストックホルム症候群」だったのか

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 2年もの長期にわたった、寺内樺風(かぶ)容疑者(23)による少女監禁事件。その間、女子中学生が周囲に助けを求めたり、脱出を試みることはなかったのか。寺内が監禁生活を強いていたアパートの3階に住む住人は、次のように疑問を口にする。

「建物の構造上、3階の住人は必ず寺内さんの部屋の前を通ることになるんです。しかも、このアパートは今年で築31年で、壁の防音は非常に弱い。だから、誰かが部屋の前を通れば必ず足音で“人がいる”って分かるんです。誘拐されていた女の子が猿ぐつわをされて“助けて!”って叫べなかったとしても、床や壁を蹴ったり呻いたりすれば、住人の誰かが異変に気付いたと思うんですが……」

 昨年11月から、寺内の隣の部屋に入居しているというアジア系の留学生は、

「寺内さんのことは、何度かお見かけしたことがありますよ。でも、大きな物音や、女の子の悲鳴やケンカみたいな声を聞いたことは一度もありません」

 ところが、

「実は、1カ月ほど前の夕方に、階段の踊り場で寺内さんと誘拐されていたという女性の2人とすれ違ったことがあったんです。女性が顔を隠したり、寺内さんが慌てたりというような様子は一切ありませんでした。黒髪で、誘拐された女性だったと思います」(同)

 と、2人が揃って外出していたと証言したのである。

■「ストックホルム症候群」

 ここで頭に浮かぶのは、誘拐や監禁などの犯罪被害者が、犯人と長時間過ごすうちに犯人に過度の同情や好意等を抱くようになる「ストックホルム症候群」と呼ばれる心理状態だ。

 つまり、女子中学生はこの特殊な心理状態に陥ったことで、外出先やアパートですれ違った留学生にも助けを求めることができなかったのではないか。ところが、精神科医の町沢静夫氏はこの見方に否定的だ。

「今回のケースに、ストックホルム症候群は当てはまりません。その理由は、女子中学生が完全に犯人の支配下にあったとは言えないからです。と言うのも、彼女は常に監視下に置かれるという不自由な生活を強いられながら、冷静さを失わずに脱出する機会を窺っていたと見られます」

 その理由として、

「千葉の監禁場所は寺内が通う大学と極めて近く、完全に彼の生活圏内にありました。寺内が防犯グッズで自分の行動を把握している上、わずか数分で自分を捕まえに来られる場所にいるのであれば、脱出は失敗するリスクが非常に高い。そうなれば自らの命を危険に晒すことにもなるわけですから、彼女は敢えて千葉での脱出を見送り、逆に犯人の信頼感を得られるように振る舞ってチャンスを待っていたのだと思います」

 町沢氏はさらに、2月下旬の転居が彼女に最大の好機をもたらしたと指摘する。

「東中野駅近くのアパートに転居したことで、彼女は住環境が一変したことを理解したでしょう。自宅の周辺には不特定多数の人々が住むマンション等があり、すぐ近くの山手通りには多くの店舗や人通りがあります。そこで、1カ月ほど様子を窺い、自分を信頼した寺内が1人で外出したのを機に、駅の公衆電話から家族と警察に助けを求めた。実に冷静かつ的確で、他人に精神を支配された人にはできない行動です」

■寺内容疑者は自己愛性人格障害

 他方、同じ精神科医の片田珠美氏はこんな分析を披露する。

「寺内容疑者は自己愛性人格障害の可能性が高いと思います。この場合、根拠なく自分が社会的に特別な存在だと思い込むので、無理やり誘拐した相手でも、相手が自分の一方的な愛情を受け入れて、やがて相思相愛になったと思い込んでしまったのでしょう」

 その寺内は、4月から新宿区内の消防設備関連の企業に勤務する予定だった。同社はすでに内定を取り消したそうだが、実家が防犯グッズ販売店を営む寺内は、防犯に次ぐ新たな“設備”のスキルを身に付けて、女子中学生との歪んだ愛情生活を続けようと考えたのか。

「特集 実家は防犯グッズ販売店! 美少女を2年も閉じこめた『千葉大工学部卒』の監禁システム」より

週刊新潮 2016年4月7日号掲載

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