実家は防犯グッズ販売店「寺内樺風」が女子中学生に作った監禁システム

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 2年にわたり、女子中学生(15)に監禁生活を強いていたのは、この春、大学を卒業したばかりの23歳の若者だった。千葉大学工学部で最先端のIT技術を学んだエリートは、いかにして少女を従属させたのか。

 ***

女子中学生(15)を監禁していた寺内樺風容疑者(Facebookより)

「3月28日の午前3時をちょっと回った頃でした。辺りはまだ真っ暗で、配達中だった俺はバイクのライトだけじゃなくて、ヘルメットに括りつけたヘッドライトも点けて走っていました。そしたら、道路の左側に人影が見えて来た。近づいて行くと、右手だか左手だったか、男性が挨拶でもするようにこっちに向かって手を挙げていたんです」

 と、静岡県伊東市で、寺内樺風(かぶ)容疑者(23)を最初に見つけた新聞配達員の男性(42)が振り返る。

「ヘッドライトで相手を照らすと、顔が血まみれでね。これはひき逃げに遭ったんだと思って、急いでバイクを降りて警察と消防に電話をしたわけです」

 通報から約15分後、寒さに震える2人のもとに到着したのは救急車と5~6台のパトカーだった。駆けつけた私服刑事による身元確認の最中に、男は過去2年にわたって女子中学生を監禁していた寺内であることを認めたという。

 この時、寺内の顔面が血で染まっていたのは、右首筋の頸動脈をカッターで切りつけて自殺を図ったからだった。そのため、この場での逮捕は一旦見送られ、寺内は救急車で病院に搬送されたのである。

■2014年3月からの2年間

女子中学生が家族と警察に連絡したJR東中野駅の公衆電話

 ここで簡単に事件を振り返ると、埼玉県朝霞市内に住んでいた美人女子中学生が行方不明になったのは、2014年3月10日のこと。それから約2年後の3月27日の午後12時半頃、神隠しに遭ったかのように行方が分からなくなっていた女子中学生は、ジャージにサンダル履きという姿でJR東中野駅に現れ、公衆電話から自宅と警察に助けを求めたのだった。

 その後、女子中学生の証言で、JR東中野駅から約300メートルの位置にあるアパートに監禁されていたことや、その借主がこの春に千葉大学を卒業する直前の2月下旬に転居してきた寺内であることが判明。すぐに埼玉県警が寺内を全国に指名手配して行方を追っていたことは、ご存じの通りだ。

■“外から鍵がかけられていた”

 さて、女子中学生は家族の元を離れていた2年の間に身長が5センチ伸びたという。彼女が思春期真っ只中にあったこの時期に、寺内はいかにして監禁生活を強いていたのか。社会部記者が解説する。

「事件当時、寺内は千葉大工学部の2年生でした。情報画像学科でコンピュータによる画像処理や、そのプログラミングをする技術を学んでいたのです。自宅は千葉大のキャンパスと道路1本を隔てた古いアパートの3階で、間取りはキッチンの他に6畳間が2つという2K。そこに女子中学生を閉じこめていたのです。家賃は4万2000~4万3000円だと聞きました」

 少女の監禁生活については、

「女子中学生は“食事などは与えられていたが、ずっと男に監視されて生活していた”“2年間、電話もインターネットも使えなかった”“男に連れられて外出することもあったが、常に監視されていて逃げ出せなかった”などと話しています。その上で“男が出かけて1人で家に残されることもあったが、その時は外から鍵がかけられていた”と、内側から開けられない特殊な鍵で施錠されて日常的に監禁状態に置かれていたことも示唆している」(同)

 今もって、女子中学生は、寺内から“縄で縛り上げられていた”或いは、“拘束具で自由を奪われていた”といった話はしていないという。にもかかわらず、長期にわたって寺内が女子中学生の自由を奪い続けることができたのはなぜか。それには、彼女が口にした「鍵」を扱う、寺内の実家の商売が関係していると見られている。

■家族経営の防犯グッズ販売店

 寺内の実家は、大阪府池田市を斜めに貫く阪急宝塚線の池田駅から徒歩5分ほどの住宅地にある。彼の父親は自宅と事務所を兼ねる一軒家で、5年ほど前から防犯設備の販売店を経営している。

「寺内の父親は防犯設備士という民間資格を持っており、経営する会社の名前は株式会社店舗サポートと言います。資本金は1000万円ですが、『e防犯.com』というサイトを通じてアラームや監視カメラといった防犯グッズの通信販売を手掛けているそうです。過去にはそのサイトが日経新聞や女性誌などに取り上げられたとか、家族経営だから何とか黒字でやっていられると話していました」(近隣住民)

 同社が扱う商品は様々だが、その中には捜査員らが、女子中学生の監禁に使用されたと睨んでいるものも複数あるという。在阪の社会部デスクが指摘する。

「ドアの内側からは開錠できない補助錠や、ベランダのサッシが開けられると感知して受信機に信号を送るセンサー、室内の様子を常に監視することができる監視カメラがそれに当たります。いずれも『e防犯.com』で扱っている商品なので、息子なら容易に入手できますし、工学部の学生だから扱いにも抵抗はなかったことでしょう」

 寺内が今年2月まで女子中学生を監禁していた千葉のアパートから、彼が通っていた工学部の校舎までは徒歩で数分の距離にある。

「そのため捜査員らは、仮に寺内が防犯グッズを使っていなかったとしても、彼が防犯グッズの存在を繰り返し女子中学生に言い聞かせて“逃げようとしてもすぐに捕まってしまう”と思い込ませていた可能性も視野に入れています。つまり、女子中学生をマインドコントロールすることで、精神的に支配下に置いていたのではないか、とも見ているわけです」(同)

「特集 実家は防犯グッズ販売店! 美少女を2年も閉じこめた『千葉大工学部卒』の監禁システム」より

週刊新潮 2016年4月7日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。