フィギュア優勝と天才子役の本田シスターズを育てた「紙芝居」

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 映画音楽に合わせて氷上を舞う少女は、まだ14歳。世界ジュニアフィギュアスケート選手権を制し、平昌オリンピックの候補に名乗りをあげた本田真凛(まりん)は、子役・本田望結(みゆ)(11)の姉でもある。女子フィギュア界の新星と芸能界の新星、いったい、どんな育て方をしたらこんな姉妹が出来るのか。

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平昌オリンピックの候補に名乗りをあげた本田真凛

 京都市南部の閑静な住宅街、その一角に2人が育った瀟洒な家がある。

「お父さんの竜一さんは不動産関係の仕事をしています。母の真紀さんは専業主婦で、学校やスケートの送り迎えなどをずっとやってきた。ご夫婦でお酒を飲みに出かけることもありますが、その時の話題も子供のことばっかりです」(近所の知人)

 テレビでも紹介されているが、本田一家は5人兄妹(男1人女4人)。長女を除いて4人がフィギュアスケートをやっており、三女の望結も子役の傍らジュニアの下の全日本ノービス大会で8位に入賞するほどの実力。また、長男の太一(17)は、全日本の強化選手に指定されたこともある。

 だが、本田家は最初からスケートファミリーというわけではない。竜一氏が書いた『長女を育て、四女に教わった本田家流子育てのヒント』(プレジデント社)によると、長男が小学校の頃にアイスホッケーをやりたいと言い出し(後にフィギュアに転向)、合わせるように竜一氏も社会人のアイスホッケーに参加。それを見ていた妹たちが、自分も滑ってみたいと次々に手を挙げたのだという。

 地元のスケート場が閉鎖されると奈良県のリンクまで送り迎えの毎日。やがて大会で入賞するようになると長男と真凛はスケートの名門・関西大の付属校に進学する。一方の望結は親と繁華街を歩いているところをスカウトされて子役デビューした。

 とにかく、子供たちがやりたいことは何でもやらせるという方針の本田家だが、それ以上に熱心なのが赤ん坊の頃から通わせていた「教室」だ。

■「杜甫」の素読も

子役としても活躍する三女の望結

 兄妹のうち4人が通った「七田チャイルドアカデミー・六地蔵教室」の岡本康裕氏が言う。

「私はこのあたりで教室を開いて18年になりますが、最初の頃に本田さんのお母さんが我々の教育法を知って訪ねてこられたのが、一家との出会いでした。それからは夫婦揃って長い付き合いです」

 教室での教え方は一風変わっている。ここは記憶力を高めるための“右脳教育”が売り物だが、驚くのは「暗唱文集」という教材を使ったレッスンだ。たとえば、中国の詩人・杜甫の「春望」や孔子の「論語」、清少納言の「枕草子」といった古典を0歳から聞かせ、素読をさせるというもの。

「さらには、吉田松陰や東郷平八郎、明治天皇、乃木希典、ナイチンゲールなど偉人の物語を紙芝居にして、読み聞かせを行っているんです」(同)

 何も知らない親が聞けば引いてしまいそうな教育法だが、もちろん、国家主義的な考えを植え付ける目的ではないと岡本氏が言う。

「教室の創立者の方針で公に尽くす自己犠牲の精神を伝えるために実践しているのです。太一君と真凛ちゃんは情が篤いせいか、紙芝居を読んでいると、いつも同じ場面で涙を流していたほどです」(同)

 それもあってか、真凛や望結は今でも「国破れて山河あり……」と唐詩をそらんじることが出来る。フィギュアスケートの複雑なプログラムをこなし、ドラマの長い台詞をすらすら言えるのも納得できるのだ。

「ワイド特集 さまざまの事おもひ出す桜かな」より

週刊新潮 2016年3月31日号掲載

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