福島第一原発を視察した「田原総一朗」(2)“歯舞が言えなかった大臣、あれが原子力委員会を仕切っているんですよ”

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 福島第一原発の事故から5年が経とうという2016年の3月1日、ジャーナリストの田原総一郎氏(81)が初めて現地を訪れた。同行するのは、澤田哲生・東京工業大学助教授(原子核工学)と、出迎えた増田尚宏氏(東京電力・福島第一廃炉カンパニープレジデント)。前回はバスで視察を行った後、福島第一の小野明所長と対面した。

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 事故収束の前線基地・Jヴィレッジに戻ると、東京電力副社長で福島復興本社代表の石崎芳行氏も加わり、意見を交換した。

前線基地・Jヴィレッジにて会談。左から石崎芳行氏(東京電力・福島復興本社代表)、増田尚宏氏(東京電力・福島第一廃炉推進カンパニープレジデント)、田原総一朗氏(ジャーナリスト)、澤田哲生氏(東工大助教(原子核工学))

【澤田】 田原さん、今日1日ご覧になって、全体的な印象と、これから何をやらないといけないと思われたか、伺ってよろしいですか。

【田原】 いろんな面で配慮されて、万全を期されていたと思う。大きな問題は四つあると思うんですね。一つは汚染水の問題。ALPSできれいにするんだけれど、福島の漁協がその水に抵抗を示している。

【澤田】 トリチウムの問題ですね。

【田原】 ええ。それをどうするか。もう一つは、1~3号機のデブリ燃料が、まだどこにあるのかわからない。これをどうやって探し出し、抜き出して廃炉にするのか、という問題。それから、廃炉作業が高等技術を要するものから単純労働まである中で、事故を起こして反発を受けている東電の仕事をする人の気持ちに、配慮されているなと。もう一つ大きいのは、事故で住めなくなった地域の人たちに対してどうするのか。この四つがあると思う。

【増田】 デブリは、ご指摘のように、まずはどこにあるのか見極める必要があります。来年度中に場所を見極め、2021年からの取り出しに向け、方策を考えていこうと思っています。

福島第一原発の1号機と2号機

■「遅すぎだよ!」

【澤田】 その技術には、世界が注目しています。

【田原】 世界中の国がどんどん原子力発電をやっているわけで、いずれの国もいつかは廃炉に向き合う。そういう意味では、東京電力が最先端の作業をやっているわけですよ。しかも、世界中で原発が新設されれば、事故は起きると思う。ということは、東電の今のデブリの取り出しを含む廃炉作業には、世界中からものすごい関心が集まっている。

【澤田】 水は今、どのくらい溜まっていましたっけ。

【増田】 70万トンを超えるくらいです。また毎日150トンくらいが地下水として建屋に入り込み、ほかにも処理するものが加わっている状況です。

【澤田】 ALPSが3台あって、今は5割ほどの稼働率だと。それで問題は、残ったトリチウムですね。

【田原】 トリチウムの問題は、経産省がまだ結論を出していないのは、遅すぎる!

【増田】 資源エネルギー庁には、トリチウムの扱いに関するタスクフォースで議論していただいており、この3月にはそこで、トリチウムをどう扱えばいいのかという選択肢の案が決まるという状況です。

【田原】 遅すぎだよ! この5年間に、資源エネルギー庁長官は4人代わっている。無責任です。原発の問題は、東電もメーカーも一生懸命で、一番無責任なのは政府。一番の問題は、日本には原子力総合政策がないこと。司令塔がないんです。

【澤田】 原子力委員会が形としてはあるんですが。

【田原】 そこを仕切っているのは、どこですか。

【澤田】 内閣府ですね。

【田原】 担当大臣は……、島尻安伊子だ。歯舞が言えなかった人ね。あれが委員会を仕切っているんですよ。

■世界的な観光センターに

【澤田】 ところで、田原さんは、ここを国際的な技術開発センターにすべきだと。

【田原】 そう、廃炉のね。世界廃炉センターみたいなのを福島に作るべきだと思う。

【増田】 今は福島・国際研究産業都市という構想を推進していただいていて、今後出てくるデブリ燃料は、よい研究材料になるでしょうし、遠くに持っていくわけにいかないので、周りに施設を作ることになっています。

【田原】 僕はね、福島が将来、廃炉をやり終えたら、世界的な観光センターにすべきだと思う。チェルノブイリの何十倍も素晴らしい観光地になると思う。

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(3)へつづく

「特集 原子力の専門学者座談会 御用学者と呼ばれて 特別篇 福島第一原発を視察した『田原総一朗』」より

週刊新潮 2016年3月17日号掲載

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