「ヒラリー」のスカートを踏む「ケネディ」駐日大使の思惑

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 敵が右方向にいるだけなら、対処のしようもあろう。しかし、左方向からも、そして後方からも狙われているとなれば、これら全てに対峙するのは至難の業である――。米大統領選の激戦の最中にある民主党のヒラリー・クリントン候補(68)。「左右」のライバルに挟撃されているどころか、今度は背後から、支持者であるはずのキャロライン・ケネディ駐日大使(58)が「敵」となって襲い掛かってきた。

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海の向こうでも派閥争い

「嫌々(いやいや)、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に反対している」

 ヒラリー氏のことを「左」のサンダース候補がこう揶揄したかと思えば、「右」のトランプ候補も、

「ああ、気持ち悪い。口にしたくもない」

 と、「口撃」。民主社会主義者を自任するサンダース氏と、排外主義者とも言われるトランプ氏の左右の間に挟まれているヒラリー氏。中道とされる彼女も、この両極端の2人の前では存在感の低下が否めず、四苦八苦している。

 例えば、先のサンダース氏の挑発に対して彼女は、

「2月23日、米地方紙に、明確な理由があってTPPに反対している旨を寄稿して反論。ヒラリーさんは国務長官時代にTPP交渉に携わっていましたが、サンダース、トランプ両氏が海外に富を奪われるとしてTPPに猛反対し、その主張がウケているため、彼女もTPP反対を強く打ち出さざるを得なくなった格好です」(ワシントン特派員)

■「絶対に」支持!?

 そんな折、新たにヒラリー氏に後ろから飛び掛かったのが、ケネディ大使である。3月10日付の産経新聞に掲載された単独インタビューの中で、

「TPPは雇用を創出し、農業や製造業、さまざまな大きさの企業による輸出機会の増大につながる」

「TPPは年内に完了させなければならず(中略)遅れは許されない」

 と、明言。しかし、彼女は2014年、当時まだ大統領選出馬を正式表明していなかったヒラリー氏に対して、出馬すれば「絶対に」支持すると、米メディアとのインタビューで断言した過去があるのだ。

 米国務省関係者の解説。

「民主党内には、オバマ派とヒラリー派の対立が根深く存在しています。08年の大統領選でヒラリー側は、候補の座を争っていたオバマ氏を徹底的に攻撃。オバマ側にはヒラリー派への恨みが残っている。ケネディさんは本来、TPP推進のオバマ派ですが、同じ女性だからということで、深く考えずに14年にヒラリー支持を表明してしまった。しかし、結局、オバマ派の『心根』は変わっていなかったというわけです。まあ、ケネディさんは政治素人ですからね……」

 在米ジャーナリストの古森義久氏の見通しはこうだ。

「ヒラリーとケネディは表面的には仲良くしていますが、TPPを巡って大きなギャップが生じた。これでは足並みが揃いません。過去の確執もあり、オバマもヒラリーを心からは支持していない。こうした事情から、今後、ケネディがサンダースに肩入れする事態も起きかねません」

 田中真紀子女史の迷言を借りれば、本籍・オバマ派のケネディ大使に「スカートを踏まれた」ヒラリー候補は、八方塞がりならぬ、三方塞がりのようである。

「ワイド特集 春色の時限爆弾」より

週刊新潮 2016年3月24日号掲載

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