囲碁ソフトで俄然注目「AI関連銘柄」の化ける時

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 一気の3連勝だった。AI(人工知能)に軍配が上がった、AI対人間の囲碁5番勝負。著しい進化を遂げつつあるAIの実力と、その将来性をまざまざと見せつけられる結果となった。

「文部科学省は、2016年度に国内最大級のAI研究拠点“AIPセンター”を開設。10年間で1000億円を投じて、アメリカや中国が先んじているAI分野での国際競争力を高めようとしています。また経済産業省も、産業技術総合研究所に拠点を設け、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のロボット研究予算をAI開発に割り当てます」(経済部記者)

 AIにはふたつの方向性がある。ビッグデータや知識を統合的に解析する“データ・知識融合型AI”と、人間の脳のように思考する“脳型AI”だ。その両方に対して、政府が本格的に乗り出してバックアップするなら……さらなる成長が見込まれる分野だけに、市場でも“AI関連銘柄”の化け時に注目が集まっている。

「その象徴とも言えるのが、昨年11月19日に東証マザーズに上場したロゼッタです」(経済ジャーナリストの田部正博氏)

 ロゼッタは自動翻訳のソフトを提供する企業だが、AIを利用した、より高精度の自動翻訳を研究開発中。

「IPO(新規公開株)の公募価格は1株695円でした。が、上場後についた初値は3705円と急騰。AI関連銘柄の人気の高さを見せつけました」(同)

■どこまで人間に近づくか

 一方、実績を着々と積み重ねているのが、東証マザーズ上場のUBICである。

 UBICは、法的な紛争や訴訟に際して、証拠保全のための電子データ収集やビッグデータの解析を行っている企業。そのノウハウを使い、行動情報データを解析する“AIインキュベーター”を開発したほか、

「人間の機微を理解するAIエンジン“KIBIT”を開発。これをベースに、潜在的なチャンスやリスクなどの“予兆”を知らせてくれる“AI助太刀侍”を提供しています」(同)

 こうしたIT系のベンチャー企業だけではない。意外なところでは、ジャスダック上場のユニバーサルエンターテインメント。

「パチンコ・パチスロ機のメーカーとして知られていますが、AI研究にも積極的。こちらは言語学とAIの知見を取り入れ、対話型の顧客応答プラットフォーム“CAIWA”を開発し、すでに約50件もの導入実績があります」(同)

 キーボードやタッチパネル、音声で入力された質問に、まるで人が対応するような自然さで適切に応答するというもの。

 こうした対話AIは、ソフトバンクが発売したヒト型ロボット“Pepper”で知られるが、

「東証1部上場の富士ソフトが開発したロボット“パルロ”は、その高い会話能力を生かして、高齢者福祉施設や病院などで活躍中です」(同)

 ロボットの分野では、身体補助用ロボットスーツ“HAL”を開発したサイバーダイン(東証マザーズ)。

「羽田空港で稼働中のサイバーダイン製清掃ロボットは、AIを利用して掃除するエリアを学習したら、カメラで認識した障害物を避けながら、自動的に掃除するというもの。さらに主力の“HAL”に、人間の小脳並みの情報処理機能と学習機能を持たせるための開発も始めました」(同)

 もちろん大手企業もAIに積極的だ。

「NECや日立製作所はもちろん、自動運転を開発中のトヨタ自動車は約1100億円を投資して、アメリカにAI研究の会社を設立しました。さらにカドカワ傘下のドワンゴも、人工知能の研究をしています」(同)

 人間の脳に、思考にどこまで近づくのか──いずれは相場の予測も株の売買も、AI任せになる時代が来るかもしれない。

週刊新潮 2016年3月24日号掲載

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