大谷翔平がカツを頬張った 花巻「大食堂」の悲報

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 特大ソフトクリーム170円、中華そば350円、オムライス470円――。

 約200種類あるメニューの値段は、ほとんどが500円前後。給仕する店員の正装や琥珀色のレトロな照明が相俟って、昭和の雰囲気満点のマルカン百貨店大食堂(岩手県花巻市)が6月に暖簾を下ろす。

 今や宮沢賢治と並ぶ郷土の誇りとなった、日本ハムの大谷翔平と西武ライオンズの菊池雄星。彼らが青春時代を過ごした食堂の閉店は、マルカン百貨店の撤退を受けてのコトだが、総務部長の高橋節男氏は、肩を落としてその理由を話すのだ。

「8階建ての建物は開店して43年。設備更新と耐震工事が必要となり、費用が捻出できませんでした」

 その額は数億にも上るが、駅前のシャッター通りと化した光景を見ればさも有りなんなどと思うなかれ。400以上の席数を誇るこの大食堂は、平日でも満席状態。休日のピーク時は、観光客も加わり30分以上並ぶことはザラである。

 だが、お客の目当ては安さと味だけではない。

「ここに来れば顔馴染みに会えると、近所のお年寄りから若者まで地元民の憩いの場でした。5年前の震災直後は、津波から逃れた方々が、知り合いを求めて集まってきました」(先の高橋部長)

 で、大谷や菊池の母校でも、甲子園絡みの祝勝会はマルカンだった。明かすのは花巻東高校の副校長だ。

「現役野球部員は大食堂のお世話になっていましてね。OBもマルカンさんに勤めていることから、大人数でも無理を聞いてくれた。無くなるのは本当に残念でなりません」

 大食堂で大谷選手は、カツなど肉中心のメニューを貪るように食べていたとか。

 彼らの胃袋を満足させた“注文の多い料理店”が、消えようとしている。

週刊新潮 2016年3月17日号掲載

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