“経済失速”“政界汚職”五里霧中の「リオ五輪」

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 靴磨きから大統領へ――立志伝中の人物であり、かつて空前の人気を誇ったルラ前大統領が4日、汚職容疑で連邦警察に拘束、8月に南米初の五輪開催を控えたブラジルはいま大揺れだ。

「自宅にいたら外でクラクションが何度も鳴り、鍋を叩く音や笛の高い音が聞こえる。何事かとテレビをつけたら、前大統領ついに事情聴取という一報。テレビもラジオも一日中、このニュース一色でした」

 現地在住のジャーナリスト大野美夏氏が言うには、通りから上がる声や騒音は、市民たちの喝采だという。

「国営石油会社ペトロブラス関連の高額賄賂や便宜供与疑惑は10年近く囁かれながら捜査の動きはなし。最近は経済も最悪で反政府デモが頻発していました。労働党政権に対する不信と怒りが充満する中での拘束ですから、喝采も当然です」

 ブラジル初の女性元首、ルセフ大統領の現政権は、前大統領を後ろ盾に2011年に成立。だが、過去最悪の景気後退で人気は急落、昨年8月には8%という前代未聞の支持率を記録した。3日に発表された15年の国内総生産も、この25年で最大の落ち込みを見せている。

「好況を牽引したと言われてきた労働党ですが、03年に初めて与党となった党。政策的には無策であったのに、世界的な資源価格の高騰などで好景気を享受しただけでは、と今では陰口を叩かれています」(同)

 それかあらぬか前大統領拘束の報を受け、対ドルで低迷していた通貨レアルは上昇、市場も好感し、株価が上昇している。だが、大規模汚職の捜査が政権に及べば五輪開催に影響が出るのは必至。政治不信や不況でチケットが53%も売れ残っているリオ五輪の不人気には、ジカ熱の流行も響いていると言われるが、

「実は流行しているのは熱帯地域や貧困層エリア。他は日本に較べ乾燥していて蚊は少ない。みんなあまり気にしていませんよ」(同)

 五輪観戦に赴くなら意外な朗報だが、まずは無事の開催を祈りたい。

週刊新潮 2016年3月17日号掲載

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