「MRJ」20機“お買い上げ”はリース業界「風雲児」

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「国産初のジェット旅客機が初飛行を遂げました」。2月23日に56歳の誕生日を迎えられた皇太子殿下はこの1年を振り返り、嬉しい出来事の1つに三菱リージョナルジェット(MRJ)の試験飛行を挙げられた。

 そのMRJは1年半前に日本航空が発注して以降は新規受注が途絶え、主翼の強度不足を指摘されるなど苦難続きだった。が、ようやく“追い風”が吹き始めたという。

 三菱航空機の森本浩通社長(62)は2月16日、シンガポールで開かれた航空見本市で、米国フロリダ州に本社を置くエアロリースからMRJ20機を受注したと発表。その内容は受注総額1090億円で、10機はキャンセル可能だという。これで受注は計427機になった。航空専門誌の記者によれば、

「これまでMRJの受注は航空会社からだけで、リース会社との基本合意は初めて。目下、世界中を飛んでいる旅客機の4割はリース会社が保有し、今後はさらなる増加が見込めます。三菱航空機は、北米市場の開拓にもっとも力を注いできたので、大きな成果だと言える」

 エアロリースは、航空業界で“主力機”と呼ばれるB757を40機超保有する中堅リース会社だ。6年前、ジェップ・ソーントン氏が代表に就いてから業界でも一目置かれる存在になったという。

「ソーントン代表は、航空業界でも異例の経歴を持つ経営者です」

 こう語るのは、米国在住の航空ジャーナリストだ。

「コネチカット州の高校を卒業し、米国の弱小航空会社を振り出しにドイツの航空会社では客室乗務員だった経歴を持つ。その一方、30年以上航空機売買を手掛けて、業界では、機種の“目利き人”として定評があり、昨年まで業界団体の世界輸送航空機取引協会会長を務めていました」

 リース業界の“風雲児”のいわばお墨付きを得たMRJ。だが、全日空への初号機引き渡しは、最大1年間の延期が決まっている。この顧客に“待ちぼうけ”を食わせるのはまずい。

週刊新潮 2016年3月3日号掲載

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