初戦敗北で“ドブ板”戦術に舵を切った「大富豪トランプ」

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「アイオワを制する者はアメリカ大統領選を制す」というジンクスがあるという。1日にアイオワでスタートした米大統領選。

「全速力で9カ月間のマラソンを走るようなもの」とも言われる世界的にも特異なこの選挙。11月8日の本選挙までに民主、共和の二大政党は候補者を絞り込むため各州で予備選や党員集会を行う。

まさかの敗北から立ち直れるか

「初戦は意外な結果でした。民主、共和両党とも、支持率トップを走っていた候補が苦戦を強いられたのです。民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(68)はバーニー・サンダース上院議員(74)に辛勝したものの、ほぼ引き分け。共和党では優位だった“暴言王”ドナルド・トランプ(69)が保守強硬派テッド・クルーズ上院議員(45)に4ポイント差で敗北、マルコ・ルビオ上院議員(44)に1ポイント差と肉迫されました。候補2名が撤退を表明し、三つ巴の様相を呈し始めています」(国際部記者)

 8年前、苦い思いを味わったのはヒラリーだ。有力視されながらアイオワで無名のオバマに敗れ、ジンクス通り大統領の座を逃した。

「トランプも今回の敗北で選挙戦略の見直しを余儀なくされています」

 とは、米大統領選を長年取材してきた国際関係学研究所の天川由記子氏。

「ヒラリーは頻繁に〈10ドルキャンペーン〉といった集会を開き、体育館や公民館での草の根活動で資金と支持者を集めています。取材申請をしてある私にも頻繁にお誘いが来ます。勝ったクルーズもアイオワ全99郡で集会を行うなど“ドブ板”に熱心ですが、トランプは“地上戦”をまったくやってきていません。有力者とのパーティやメディア優先の“大名選挙”で事足れりとしていたのでしょう」

 自己所有のホテルに地域の有力者を集め、パーティ料理を並べて酒は飲み放題。プライベートジェットで飛んでは大会場に数千人を集め演説をぶつ。個人資産1兆円と公言し、「支持者からの献金は不要」と豪語した“大富豪”ならではだが、今回の敗北と支持率急落に、警察官と交流してみせるなど、“ドブ板”へ戦術転換も。

「ただ、間に合うかは疑問です。失速する時は潮が引くように支持者が減るのが大統領選の特徴です」(同)

 殊勝な“暴言王”に失地回復のチャンスはあるのか。

週刊新潮 2016年2月18日号掲載

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