「民主党は嫌いだけど……」の自虐ポスターに有権者は動くか?

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 昔々あるところに、鳩山由紀夫お爺さんと菅直人お爺さんがいました。鳩山お爺さんは普天間基地問題で迷走して米国に“借り”を作り、菅お爺さんは「3・11」後の“選択”を誤って、国を窮地に陥れました。が、間もなく2人とも檜舞台から退場。めでたし、めでたし、おーしまい─―の、はずだったのに……。以下は、寝た子を起こす愚挙に出た、民主党のお粗末な話。

 ***

「党の執行部は、現場で頑張っている人のことを全く理解していない。確かに民主党は嫌われているかもしれません。でも、それを自分たちで言ってしまったら元も子もない。言葉にした瞬間に『言霊』となって負の流れが出来てしまうんです」

 こう公然と憤怒の念をぶちまけるのは、次期総選挙で民主党の東京4区公認候補に決まっている井戸正枝元代議士(50)だ。彼女が激怒しているのは同党が1月27日に発表した新ポスターで、3種類作られたうちの1つに、

〈民主党は嫌いだけど、民主主義は守りたい〉

 と、自虐丸出しのコピーが付けられていたのである。これに対して、当然と言うべきか、井戸氏に限らず党内から「情けない」などと批判が噴出。同月30日の党大会の会場でも、「いかがなものか」と苦言を呈する声が上がったのだった。

■「人に迷惑はダメ」

「民主党を危機に瀕した問題企業になぞらえて考えてみます。世の中の移り変わりは激しく、世間が過去の不祥事を忘れかけているのに、今回のポスターはわざわざその記憶を甦らせようとしている点で、広報宣伝として極めて下手と言わざるを得ません」

 と、危機管理コンサルタントの田中辰巳氏は呆れる。

「ましてや、今夏の参院選から18歳の若者が選挙権を得ますが、彼らは民主党政権時代の拙(まず)さを肌感覚では知らない。にも拘(かかわ)らず、『民主党ってそんなにひどかったの?』と、親などに訊く機会を敢えて作ってしまった。賢い企業では、考えられない戦略です」

 これでは到底、有権者の心を動かせるはずもない。

 同党の広報委員長で、ポスター制作の責任者である寺田学代議士(39)は、

「民主党の支持率は1桁台に低迷しています。とはいえ、安倍政治は嫌いという人は少なくない。そうした人に向けてのメッセージを込めました」

 こう説明しつつ、

「発表する前に、何人かの議員に見てもらったところ、『もう少し表現を丸めたほうがいいのではないか』という声があったのは事実です」

 その「まとも」な意見を言った議員は誰なのかとさらに尋ねると、なぜか、

「記憶にないなー」

 と、甘利明前経済再生相ばりに惚(とぼ)けるのだった。 

 最後に、〈消えそうな芸人ランキングからも消えました〉等のネタで知られる、「自虐専門お笑い芸人」のヒロシ(43)による民主党ポスター評。

「僕の場合、僕個人を自虐しているわけですが、それを組織でやるのは難しい。実際、民主党内で嫌がっている人もいるんですよね。自虐ネタで人に迷惑をかけちゃいけません。民主主義なんですから。どうせなら、『皆が大好き民主党』くらいまで開き直れると、究極の自虐ネタになったと思いますが、何て言うか、民主党さんの今回の『ネタ』は練りが浅い感じがします」

 というわけで……。

 ドンブラコ、ドンブラコと、民主党は崩壊の川を下り続けていくのでした。

「ワイド特集 崖っぷちの歩き方」より

週刊新潮 2016年2月11日号掲載

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