われらの財布はどうなる 三菱東京UFJ「仮想通貨」計画

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 三菱東京UFJ銀行が独自の仮想通貨を開発中――こう報じられたのは、2月1日のことだった。

“仮想通貨”と聞くと、すぐに思い出すのが“ビットコイン”だ。円やドルとビットコインとの交換レートが大きく変動していたため、投機の手段と見られることが多かった。

三菱東京UFJ銀行

「2009年から流通し始めたビットコインですが、世界最大の取引所だったマウントゴックス社が14年2月、85万ビットコイン(時価470億円)の“消失事件”を起こして経営破綻。その後の調べで、当時社長だったマルク・カルプレスのデータ不正改竄と業務上横領だったことが発覚。昨年8月、警視庁に逮捕されました」(社会部記者)

 また07年に発覚した疑似通貨“円天”による詐欺事件もあり、こうした“通貨”に対していいイメージを抱いている人は少ないだろう。だが、

「決済手段としての価値は落ちていません。アメリカのオンライン旅行予約大手のエクスペディアや、パソコンメーカーのデル、アメリカの楽天スーパーロジスティクスなどが、ビットコイン決済を導入しているのです」(経済部記者)

 なぜ決済手段として活用されるのか。それは、ビットコインを使った方がコストを下げられるからなのだ。

 例えば銀行を通じた金融取引の場合、そのデータは銀行の所有する大型コンピューターで集中管理し、改竄や二重取引などのチェックを行っている。こうしたシステムの維持管理費用は膨大で、それが手数料に反映されるわけだが、

「ビットコインは、そうした大型コンピューターやシステムが不要な仕組みなのです」(同)

■送金手数料の節約に

 その仕組みを支えているのが、“ブロックチェーン”という技術だ。

「すべての取引データを、ネットワークに参加する利用者それぞれが持ち、常時相互監視することで、不正を防ぐことができる、というもので、“分散型台帳”とも呼ばれています」(ITジャーナリスト)

 仮に、ある利用者が〈自分は100ビットコインを所有している〉というウソの情報を流したとする。ところが、他のすべての参加者が持つ取引データにはこの情報がないから、“ウソ”だと確認できる、というわけだ。

「MUFGコイン」発行元となるか

「大型コンピューターやシステムが不要になれば維持管理費も不要となり、手数料が減らせるのです」(同)

 三菱東京UFJ銀行は、この新技術に注目したのである。昨年9月には日本の金融機関として初めて、ブロックチェーン技術に強みを持つ米ベンチャー企業・R3と提携。

「これにより、シティグループやバンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックスなど30の世界的大手金融機関と共に、ブロックチェーン活用の検証を始めることになった」(同)

 今回、三菱東京UFJ銀行が数年で“仮想通貨”の実用化を目指しているように報じられたが、

「社内というクローズドな環境で、独自のブロックチェーンを構築して活用法の検証を行っているのは事実です。が、あくまで新技術の試行、研究というレベルで、その先に何らかの計画があるわけではありません」(三菱東京UFJ銀行)

 もし将来、銀行が“行内通貨”を導入すれば……。

「預金を行内通貨に交換すれば、行内の海外拠点への送金などは手数料がぐっと節約できますし、空港や海外での外貨の両替も簡単になる。また、行内通貨をショッピングやマイレージなどの“ポイント”と連携させれば、金融サービス以外の分野でもさまざまに利用できるでしょう」(先のジャーナリスト)

 心配なのは投機性だが、

「交換レートを固定してしまえば問題ない」(同)

 フィンテック革命の幕が、いよいよ開き始めた。

週刊新潮 2016年2月11日号掲載

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