世界一幸福な「デンマーク」が難民財産を没収するワケ

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 悪魔の鏡の欠片(かけら)がささり、性格が一変した少年は雪の女王に魅入られる――というのがアンデルセンの名作童話だが、この作家の故国の豹変が物議を醸している。

デンマーク・コペンハーゲン中央駅には大勢のシリア難民が

「1月26日、デンマーク議会は難民申請者から財産を没収できるとする法案を可決したのです。1万クローネ(約17万円)を超える現金や所持品を入国時に警察が押収できます」(国際部記者)

 銀行口座や生活必需品、思い出の品は例外となるが、パソコンや貴金属は没収対象、難民の食費や滞在費用に充当されるという。

 昨年は難民を1万5000人受け入れ、今年は2万人を予定する同国。難民問題に理解があると見られていたが、今回の措置は、

「もう難民は来ないでくれ、という悲鳴でしょう」(同)

 昨年、欧州全体で100万人を超す難民が押し寄せ、今も1日1000人が流れ込む。

 現地在住のライター針貝有佳氏は言う。

「周りのデンマーク人は、海外から注目を浴びてむしろ戸惑っているようです」

 スイスやドイツの一部の州も財産没収制度を導入しており、また、近年の移民増で犯罪が増加。2012年、13年の国連調査で「世界一幸福な国」とされた同国では、国民は医療や教育など高い福祉を支えるため所得の半分近くを納税する。難民による“福祉のタダ乗り”が増えれば、国家の根幹を揺るがしかねないのだ。

「デンマーク人と家庭を持つ日本人でも在留許可は厳しいのです」(同)

「雪の女王」では少女の涙が少年の心を溶かすが、ことはそう簡単ではないのだ。

週刊新潮 2016年2月11日号掲載

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