キヤノン「御手洗冨士夫」が新社長に課する過酷ミッション

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 キヤノンの“ドン”御手洗冨士夫・会長兼社長(80)が、ようやく後継者育成に重い腰を上げた。1月27日に眞榮田(まえだ)雅也専務(63)の社長昇格を発表し、事業全般を任せると説明したが、早くも新社長に過酷なミッションを課したのだ。

 1995年の社長就任以降、御手洗氏は2006年に日本経済団体連合会の会長就任で一旦後進に職を譲ったが、その6年後から会長と社長を兼務していた。全国紙の経済部記者は、眞榮田新社長への同情を口にする。

「眞榮田さんが御手洗さんの“経営哲学”を熟知しているとはいえ、目標を達成するのは厳しいでしょう」

 その目標とは、2020年までの中長期経営計画で売上高原価率45%の達成だ。

「原価率の削減は、御手洗さんの持論。自社のホームページには、いかに原価削減に力を注いできたかを綴っています」(同)

 ホームページを見ると、〈生産革新活動による原価率低減〉なる項目が。そこでは御手洗氏の社長就任後の96年に59・3%だった原価率が、18年かけて50・1%まで改善されたと自画自賛しているのだ。

「原価率45%なんて、飲食業かと思いました」

 こう驚きを隠さないのは、家電メーカーの幹部だ。ちなみに、飲食業界のそれは30%だと言われている。

「メーカーの原価率は60〜70%台。かつてコピー機などの原価率は100%近くあり、長期に亘る“保守点検費”で儲ける構図だった。50%台でも驚異的なのに、それが45%というのは信じがたい数字です」

 安く作って、大量に売り、大きく儲けるのは商売のコツ。他社の企業努力が足りないのではないか。

「原価率の削減は、人件費か、原材料の仕入れ価格を抑えるのが主な方法。社員の給与を下げるわけにはいかないし、仕入れ価格を下げれば“取引先イジメ”と叩かれかねません」(同)

 キヤノンで、派遣労働者の偽装請負問題が発覚したのは06年の御手洗会長時代。眞榮田新社長は、このミッションにどう取り組むのか。

週刊新潮 2016年2月11日号掲載

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