伊藤忠「社長続投」宣言に泣いた「3人の候補」

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〈定石通りの投手交代で試合は逆転劇に陥った〉。昨年11月開催の野球「プレミア12」で、韓国に逆転負けを喫した“侍ジャパン”。伊藤忠商事の岡藤正広社長(66)は1月12日、その采配ミスを引き合いに出して 全社員にメールで“続投”を宣言した。社内は歓迎ムード一色だが、密かに落胆している幹部もいるのだという。

「当期利益で、初の総合商社トップは確実。岡藤さんの“続投”は当然です」

 こう語るのは、伊藤忠商事の中堅社員だ。

「昨年末、最終的に総合商社トップに立てば“臨時ボーナス”が出ることも決まった。6月の株主総会を経て支給されますが、5万円、10万円の“寸志”ではないと聞いているので楽しみです。“第2次岡藤政権”の成立に不満を抱く社員なんていません」

 戦後、伊藤忠商事の社長は岡藤氏を含めて8人。過去2代の社長の在職期間は6年だったが、岡藤氏は7年目に突入する。功績を考えれば、当然かもしれないが、ポスト岡藤の座を虎視眈々と狙っていた面々は、陰ながら涙をこぼしていたに違いない。全国紙の経済部記者が解説するには、

「ポスト岡藤には、3人の専務が有力視されていました。繊維畑出身の岡本均さん、儲け頭の住生活・情報部門担当の吉田朋史(ともふみ)さん、そしてエネルギー部門の福田祐士さんです。特に、福田さんは“続投宣言”にショックを受けたのではないでしょうか」

 その理由は、社運を賭けた対中国投資にあるという。

「昨年1月、伊藤忠はタイの財閥と組み中国の国有企業集団CITICへの約6000億円もの巨額投資に踏み切った。CITIC戦略室長を兼務する福田さんは岡藤さんと二人三脚で歩んできたので、“禅譲”を期待していたはずです」(同)

 で、岡藤氏はいつまで投げ続けるつもりか。伊藤忠商事の報道室に聞くと、

「経営課題にメドが付くまで、と申しております」

 王座奪還に燃える三菱商事は、“切れ者”垣内威彦(たけひこ)常務の社長昇進を決めた。強力なライバル登場に、岡藤氏はしばらくマウンドから降りる気はなさそうだ。

週刊新潮 2016年1月28日号掲載

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