実父が語った「キングオブコメディ」女子高生制服収集の聖域

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 買い物客でごった返す築地市場やアメ横と同じく、人気芸人にとっても年の瀬は書き入れ時である。だが、この年末、お笑いコンビ“キングオブコメディ”のツッコミ担当・高橋健一(44)はバラエティ特番ではなく、ニュース番組ばかりに出ずっぱり。まもなく白日の下に晒されたのは、コメディでは済まされない執拗な犯行と、“聖域”の存在だった。

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 腰の曲がった白髪の老人は時折、言葉を詰まらせながらこう漏らした。

「20年前から制服を盗んでいたなんて、そんなこと全く知りませんでした。確かに、息子と2人で暮らしてきましたけど、私は要介護1で歩くのにも苦労する有り様。2階にある息子の部屋に出入りすることはなかった。逮捕された当日も、いきなり警察が来て息子を連れて行ったんです。もう、何が何やら……。皆さんにご迷惑をお掛けして、ただただ謝るしかありません」

 大田区内の古い木造2階屋で取材に応じたのは、高橋の実父だ。2階に続く階段は玄関の正面にある。だが、階段の前には、スニーカーが乱雑に詰め込まれたシューズラックが置かれ、他者の侵入を拒んでいた。

 警視庁の捜査員がこの階段を上り、“聖域”へと踏み込んだのは昨年12月26日のこと。捜査3課はその日のうちに窃盗容疑などで高橋を逮捕した。

 2010年に開催された『キングオブコント』で優勝を果たし、一躍、売れっ子芸人となった高橋。相方の今野浩喜は『下町ロケット』で、阿部寛演じる主人公の部下役に抜擢され、注目を浴びたばかりだ。そんな順風満帆の芸人人生を歩んできたにもかかわらず、彼は湧き上がる欲望を抑えることができなかった。

「実は、高橋の名前は一昨年末から捜査線上に浮かんでいました」

 と明かすのは、取材に当たった社会部記者である。

■“福”が欲しい。

「江東区内の都立高校から女子生徒の制服が盗まれた際、防犯カメラに不審な軽トラックが映っていた。そのナンバーから、所有者が高橋の父親と判明。捜査を進めると、高橋本人がこの車を頻繁に使っていたことが分かったのです」

 そして、逮捕に繋がる“事件”が起きる。昨年4月25日の正午過ぎ、高橋は警察にマークされているとは知らず、世田谷区内の都立高校に忍び込み、更衣室から女子高生3人分のブレザーやスカート、生徒手帳などを盗み出した。

「相手が芸能人なので慎重に裏付け捜査を進めていたようですが、最近になって他校でも似たような事件が起きた。被害の拡大を防ぐため、捜査員は逮捕に踏み切りました」(同) 

 彼の聖域からは、実に70袋ものゴミ袋に詰め込まれた、約600点に及ぶ制服などが見つかっている。

「高橋は人が少ない土日を狙い、校内で目立たないようジャージー姿で犯行に及んでいた。都内だけでなく、埼玉や神奈川の学校でも盗みを働き、“性的欲求を満たすために20年ほど前からやっていた”と供述しています」(同)

 とても“一発屋”とは呼べない常習犯の手口である。

 ちなみに、彼のツイッターからも“制服”欲の一端が垣間見える。事件直前の昨年2月、節分に合わせて〈鬼は外。福が欲しい。〉とつぶやいているのだが、これは明らかに“服が欲しい”の変換ミスであろう。

 ともあれ、彼を幼少期から知る近隣住民も、その裏の顔には驚きを隠せない。

「ケン坊は漫画が大好きな、優しい子で、去年の夏には“潮干狩りに行ったんだ”と、アサリをどっさり持って来てくれた。見た目はイケメンだし、制服泥棒なんて想像もしなかった」

 一方で、彼が供述した“20年ほど前”には、思い当たるフシがあるという。

「ちょうどその頃、ケン坊のお母さんが難病を苦に自殺したんです。母親想いなケン坊のショックは大きかった。それに、自宅で赤帽を営んでいたお父さんの影響もあると思う。最盛期は5台の軽トラックを使うほど儲かっていたんですが、タイや台湾で女遊びをするようになってね。結局、事業が傾いて商売を畳んでしまった。トラックは1台を残して売り払ったけど借金は減らず、ケン坊も肩代わりしていたから相当なストレスがあったはず」(同)

 残された1台の軽トラが、一連の犯行に使われたことは言うまでもない。

 先の実父が続ける。

「息子が金を出してくれたのは事実です。苦労を掛けたな、という思いはある。全て私が悪いんです……」

 人気お笑い芸人の“病理”について精神科医の片田珠美氏はこう分析する。

「彼の場合、母親の死という喪失体験が、病的な収集強迫の原因になったと考えられます。連続幼女殺害事件の宮崎勤が祖父の死を機に、ビデオ収集に熱中したのに近い。こうした収集癖は一種の狩りなので、地位や名誉を失うリスクを冒しながら制服を盗むという行為自体に意味があります」

 余罪の追及は続くものの、初犯のため、執行猶予判決が出る公算は高い。しかし、

「彼のようなフェティシズムは基本的に一生変わりません。再犯の懸念も残ります」(同)

 すでに事務所も解雇された高橋。気鋭の若手芸人の人生は、喜劇ならぬ逮捕劇で幕を閉じてしまった。

「ワイド特集 剣が峰にて一陽来復」より

週刊新潮 2016年1月14日迎春増大号掲載

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