去る者は日々に疎しで「北の湖」の遺言は「九重親方の復権阻止」

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 2人が犬猿の仲であることは、角界で知らぬ者はいなかった。北の湖前理事長(享年62)は生前、後事を託した八角新理事長(52)に、九重親方(60)の復権を阻止すべく、遺言を残していたのだ。しかし、去る者は日々に疎しで、早くもそれは、反故(ほご)にされつつある。

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北の湖前理事長

 12月18日、日本相撲協会の理事会で、八角親方が新理事長に選出されたが、それはスンナリと決まったわけではなかった。

 協会関係者が明かす。

「11月の九州場所中に、北の湖理事長が急逝し、ナンバー2の事業部長だった八角親方が、理事長代行を務めてきた。ですから、理事長就任は既定路線だったわけですが、理事、外部理事による投票の結果、満場一致ではなく、賛成6反対5という僅差で、八角理事長は誕生しました」

 実は、北の湖前理事長は病魔に冒されたあと、後継者である八角親方に“遺言”を残していたという。

「八角親方がお悔みを述べに行った際、北の湖前理事長のおかみさんから“ブレずに頑張れと言っていましたよ”と伝えられました。その遺言は要するに、九重親方の復権を許してはいけないという意味だと推測されているのです」(同)

■“1期でいいから”

 14年1月に行われた、日本相撲協会の理事候補選挙で、九重親方は理事に残れなかったばかりか、監察委員という閑職に追いやられている。

 角界に詳しいジャーナリストが解説する。

「虎視眈々と、トップの座を狙っている九重親方にしてみれば、北の湖前理事長は、目の上のタンコブでした。そこへ来て、北の湖前理事長とパチンコ利権にまつわる記事が雑誌に掲載された。リークしたのは九重親方の周辺であると囁かれ、その結果、北の湖前理事長サイドからの反撃に遭い、干されたのではないかと言われていました」

 しかし、北の湖前理事長が他界すると、いよいよ復権を目論んでいるという。

「相撲協会の理事候補選挙は2年ごとに行われます。次は16年1月ですが、それに九重親方が立候補するのは確実。前回は5票しか獲得できず、落選の憂き目に遭った。現在、当選確実ラインと見られる10票を目指し、親方衆に根回しをしている。ただ、常に人を見下しているような横柄な態度で評判は悪いですから、相当の“実弾”をばら撒くしかないでしょう」(同)

 言うまでもなく、八角理事長にとって、九重親方は兄弟子にあたり、現役時代、同じ九重部屋の力士として稽古に切磋琢磨する間柄だった。

 前出の協会関係者によれば、

「北の湖親方は、名誉欲に駆られているだけの九重親方が、もし理事に復帰した場合、“1期でいいから、理事長をやらせろ”などと八角親方に詰め寄るかもしれないと懸念していた。だからこそ、遺言を残したのです。ですが、すでに、八角親方はブレているフシがある。理事会が開かれる10日ほど前、九重親方と会食し、手を組んだという話が流れました。そのため、理事長就任に対し、反対票を投じた理事が出てきてしまったのです」

 伏魔殿のような相撲協会のかじ取りは、八角理事長には荷が重すぎたのかもしれない。

「ワイド特集 敵もさる者 引っ掻く者」より

週刊新潮 2015年12月31日・2016年1月7日新年特大号掲載

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